岡部文明(元ラガーマンの画家)
サーカスのピエロが東京・銀座に集結した。ピエロといっても、絵画の上での話だが、このほど、「ピエロの画家」として知られる元ラガーマンの岡部文明さんの個展『ピエロの小宇宙への誘い』が銀座の画廊で開かれ、連日、ラグビー関係者やファンの人々が押しかけた。
岡部さんが顔をくしゃくしゃにする。
「こんなにたくさん来ていただいて、幸せに思っております。人生は出会いです。出会いによって、自分が成長していきます」
岡部さんは高校時代、ラグビーの練習中に首を骨折し、車いす生活を送りながらも絵筆を握り続けてきた。故郷の福岡にやってきたサーカスとの出会いが人生を変えた。光りが見えた。道化に徹しながらも、どんな人の心も豊かにする姿に感銘を受けたのだ。
「ピエロを見た時、哲学めいたメッセージが僕に伝わってきたのです。誰をも幸せにする。ピエロの願いはきっと、全世界の平和なのです」
以後、絵を必死に学び、欧米やロシアなどを旅して、約500人のサーカスのピエロと交流を重ねてきた。ピエロを主題に絵の創作活動を続け、2011年ラグビーワールドカップ(W杯)期間中には開催地ニュージーランドで個展も開いた。
国内でもあちこちで個展を開き、銀座での個展は5年ぶりとなった。数十の秀作が並び、なぜか画廊にはほのぼのとした空気があふれていた。女優の吉行和子さんや、グループサウンズ『ザ・タイガース』のメンバー、瞳みのるさんの姿もあった。
65歳。歳月と共に岡部さんの画風も微妙に変わってきた。これまでと比べると、総じて絵が明るくなった。人に喜びと楽しみを与えるピエロは清く、正しく、オモシロく。「喜楽」に焦点を当てて描いたそうだ。
「退屈しないオモシロさ。そのあたりを一生懸命に描きました。去年の秋ごろから、この個展に向けて、(アトリエに)籠もって、季節に置いてきぼりにされながら描いて、いま地上に出てきた感じです。あまり気負わず、気楽に描けたというのが一番です」
ピエロの絵を描き始めて、ざっと40年が経つ。挑戦と試行錯誤の歳月だった。口癖は「共存、共生」である。
共存は、同じ空間に同時に存在すること。共生とは、それだけではなく、お互いが必要としあうような関係性があることだろう。
「つまり平和です。一応、40年という歩みの中では(この個展は)うまくいったのかな、と思います。でも、これで終わりじゃなく、まだまだこれからもずっと続きます」
ラグビーで試練を味わい、ピエロとの出会いで夢を知った。いろんな人々によって、今も生かされている。ラッパを持ったピエロのごとく、元ラガーの画家はたのしく踊り続けるのである。