事実、介護保険制度は、2006年の改正法施行の段階で、介護報酬の引き下げ0.5%が実施され、09年、12年の改正では報酬そのものはアップ(介護職員の処遇改善費が中心)されたが、諸条件を加味すると実質の報酬は引き下げとなっている。さらに、介護施設の整備にも総量規制がかけられている状況で、老人施設の入居待ち状態にある人は42万人を超えた。

そして、12年の介護保険制度改正で国が打ち出してきたのは、地域包括ケアの推進によって施設介護から在宅介護重視への方向転換策である。「住み慣れた場所でできる限り住み続けることができる環境づくり」と言われれば、何となく納得せざるをえない考え方であるが、その裏側には、財政の逼迫と介護費用の抑制という大方針が隠されている。

ポックリ逝ける住まい探しとは

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高齢者の住まい

トイレ付きで18平方メートルから25平方メートルの居室は、畳に換算すると生活空間は6~8畳ほどのスペースとなる。居室内にミニ・キッチンが付いているケースはまれで、食堂の共同スペースと大浴場もしくは独り用の浴室、介護が必要になったときの機械浴室の設備が共用スペースとして設けられている。これが、最近注目を集めている「サービス付き高齢者向け住宅」の一般的なハードである。

このスタイルから想像できることは、居室が自立した高齢者の生活する空間というより、介護の必要な高齢者のために用意された部屋という印象が強い。はたして、ここに元気なうちから住み替えて、終のすみかとすることを受け入れられる高齢者はどのくらいいるだろうか。ニューシニアと呼ばれる団塊世代が入居を考える10年後には、おそらく見向きもされない高齢者住宅となる可能性は高い。

こうした状況に危機感を募らせるのは、自立した高齢者を対象に高齢者住宅の可能性を探るコミュニティネットの高橋英與社長だ。

「高齢者人口がピークを迎える25年はすぐそこまで迫っています。人口のピークが過ぎて人口減少の局面にさしかかれば、おそらく現状のような高齢者住宅が供給過多の時代を迎えますね」

部屋の広さをはじめ、提供されるサービスまで、ハードとソフトをすべて先に決めて提供される画一化された大量生産方式の高齢者住宅の急増は、高齢者の生活という視点から見ると、その先行きに暗い影を落としているように感じられる。