老後を安心して送るには高齢者住宅、介護施設、在宅介護サービスをじっくり吟味し、自らが選ぶ時代を迎えている。

老年医療と病院が変わる新サービス

療養型病院で挑む新サービス/医療療養病床、回復期リハビリテーション病棟、介護療養病床を持つ有馬温泉病院。

神戸市北区有馬町、温泉街の中心部から車で5分ほど走ると、医療法人甲風会・有馬温泉病院の全貌が見えてくる。同病院は、14年1月にグランドオープンしたばかりだ。

ベッド数は304床、このうち154床が医療療養病床で一部57床が回復期リハビリテーション病棟となる。残りの150床は介護療養型医療施設となり、市内の高齢者医療の中核を担う。一般浴室、特殊浴槽で温泉が利用でき、来院者にも遊歩道付近に足湯を設置した。また、病院敷地内の散策で森林浴も満喫できる環境が整えられる。

有馬温泉病院の松浦役兒理事長。

同病院では、ハードの整備に加えて、情報通信技術(ICT=インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)による変革に挑戦する。簡単にいえば、iPadを利用したコミュニケーションツールの活用である。

同システムの開発、販売を行っているゆみのコーポレーションの難波澄子社長は、「私が使えるくらい簡単なシステムです」と笑いながらiPadの画面を目の前に置いた。画面上にはナース、ご家族、コンシェルジュ、インターネットと書かれた大きな表示板があり、ナースのボタンを押すともう1台のiPad のコールが鳴り、画面に彼女の顔が映った。

つまり、ナースコールシステムがナースと患者の顔が双方向で確認できるコミュニケーションツールとして活用できるのである。同様に、家族のボタンを押せば瞬時に家や外出先にまで繋がる。コンシェルジュボタンは、使い方がわからない入院患者のサポート機能となる。

「病院のコミュニケーションのあり方が変わります。すなわち、病院そのものが変わる。高齢者医療のあり方だって変える力をもっていますね」

同病院の松浦役兒理事長は、これからの高齢者医療を提供する病院が、ただ安静にじっと過ごしている場所ではなく、人生を全うするために過ごす場になるべきだと指摘している。