自分らしい暮らし方を継続し、医療、介護といった安心の備えをもちながら、最期を迎えるときまで暮らせる場所がきわめて少ないのである。このままの状況が続けば、高齢者とその家族の多くは、どんな老人施設や高齢者住宅に住めば安心して死を迎えることができるかという不安を抱えながら、老人施設選びのノウハウを身につけ、施設を探すことに奔走しなければならない。
これから求めていかなければならないのは、「介護が必要になったら高齢者施設」というパターン化された選択ではなく、健康なうちから老後のあり方を考えられる住環境の確保とその方法である。高齢者住宅マーケットの思惑どおりに提供されるサービスを受け入れているだけでは、本当の意味で「安心して老後を送れる住まい」を得ることは難しい。団塊の世代が高齢者住宅への入居を考える頃には、間違いなく新しい価値観が生まれているだろうが、それ以前の段階、まさに今から準備を始める必要がある。
誰と、どこで、どのように暮らすのか。この際、高齢者住宅、介護施設、在宅介護サービスの実情と照らし合わせながら、自分自身で吟味し決断する時期にさしかかっている。その視点からブレることなく、老後の住環境について考えてみたい。
(和田久士=撮影)