持ち家一戸建てが終の棲家になりえたのも今は昔。平均寿命の延びや「おひとりさま」高齢者の急増によって、次のステージへの住み替えが推奨されるようになっている。
日本人の58.8%が、自宅で最期を迎えたいと考えているにもかかわらず、実際に在宅で「死ぬことができる」人の割合は10%にも満たない(厚生労働省「終末期医療に関する調査等検討会」報告書)。同報告書によれば、その主な原因は、「介護してくれる家族に負担がかかる」「症状が急変したときの対応に不安がある」の2つであるという。
現役世代にとってはまだ先の話とはいえ、老親のライフプランを設計するうえでは「最終的にどこで暮らすか」を考えておくことが重要となる。それは自分が老後を迎えたときのための予行練習にもなるはずだ。余裕のあるうちに綿密な計画をつくったほうがよいだろう。
厚生労働省の調査によれば、要介護認定を受け始める平均年齢は75歳、認知症の高齢者でグループホームを利用している人の半数が85歳以上だという。つまり、多くの場合75歳まではこれまでどおりの自立した生活ができるが、80歳が見えてくる頃には介護を必要とするようになり、80代後半では何らかの介護付き施設に入居する可能性が高くなるわけだ。
高齢者向け住宅施設には、入居者の介護レベルや費用にあわせて様々な選択肢がある。軽い生活支援があれば自立して暮らせる人なら「シルバーハウジング」や「ケアハウス」、寝たきりで重度な介護が必要なら「特別養護老人ホーム」などの福祉施設、費用は高額だがゴージャスな設備で暮らしたいなら「介護付き有料老人ホーム」といった具合だが、現時点ではどの施設も需要に対する絶対数が圧倒的に不足しており、「重介護になるか、施設に強力なコネがあるかしない限り、数年単位で入居待ちを続けるという人も珍しくない」(都内介護担当区役所職員)。