高齢者住宅の落とし穴

また、実際に自分が要介護状態になってしまった後に、わが子に施設選びを任せることもあまり勧められないと米沢さんは続ける。

「残念な話ですが、自分がひきとって看ることができない親を、資産とは無関係に“費用が安いから”という理由で特別養護老人ホームの多床室に入れたがる子世代が少なくないんです。つまり“親の財産はいずれ自分のものになるので、目減りさせたくない”と考えているわけです。特別養護老人ホームに入はいれず、有料老人ホームを探す場合でもより安い施設を選ぶ傾向にあります」

しかし、そんな子供が自分で施設を選ぶ場合はまったく逆になるのだ。

「私が『いずれご自分が入るとしたら?』と尋ねると、自分は2000万円以上もかかる有料老人ホームに入りたいなんて答える方もいます。親の施設はなるべく安く済ませたいと考える一方で、自分の施設は多少お金がかかっても住みやすい施設にしようとするのが一般的な傾向なのです。これは自分で選ぶからこそです」

米沢さんによると、自分が元気なうちには介護施設を決めようとしない人が非常に多いという。しかし、自分が重介護度になってからでは入る施設を自分で選ぶことができず、希望する施設に入れない可能性が高い。元気なうちに自分でしっかり計画を立てることが肝心だ。

子に財産を残したいという親心もわかるが、財産は自分の老後の安心のために使うことを勧めると米沢さん。できれば「(後期高齢者となる)75歳になったら入居する」のが望ましいだろう。

「『まだまだ大丈夫』と自宅で頑張るよりも、早い段階で自分に適した高齢者住宅に入居することで、結局は自立して生活できる期間が延びますからね」

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