年収1000万円の世帯が苦労する理由

そこで、増え続ける高齢者の受け皿として急ピッチで整備が進められているのが、「サービス付き高齢者向け住宅」だ。12年4月に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)改正によって、これまで高専賃(高齢者専用賃貸住宅)や高円賃(高齢者円滑入居賃貸住宅)など複雑に分けられていた高齢者向け賃貸住宅の制度が、この「サービス付き高齢者向け住宅」に一本化されることになった。認定の基準としては、(1)居住面積が原則25平方メートル以上、トイレと洗面設備の設置、(2)バリアフリー設計、(3)安否確認・生活相談サービスを最低限供給するなどの条件がある。要介護度3程度までの高齢者が安心して暮らせる設備が必須とされている。

国が約300億円ものマネーを投入し、今後10年間で新たに60万戸もの「サービス付き高齢者向け住宅」の整備を目指している背景には、団塊世代の超高齢化が目前に迫っているという社会事情がある。高齢者問題や介護施設に詳しいファイナンシャルプランナーの山田静江さんはこう語る。

「これまで『老人ホームに入る』というと孤独で寂しい老後のイメージがつきまといましたが、それは古い常識。高齢者も体が元気なうちは自宅で悠々自適に暮らせますが、夫婦どちらかが要介護状態になったり、認知症になってしまったら、他人の手を借りずに生活するのは不可能になります。

しかし、核家族化で家族に頼るのも難しく、介護の担い手となる若者世代も絶対的に不足する超高齢化社会では、そのときになって慌てて介護施設を探しても、受け入れ先が見つからないことが十分考えられます。費用の安い施設は順番待ちで入れず、高額な有料老人ホームに入るには費用が足りないという『介護難民』にならないためにも、リタイア後の暮らし方について早めに計画しておくことが重要です」

「サービス付き高齢者向け住宅」は元会社員世帯の厚生年金受給者層の利用を想定しており、入居時に高額な一時金を支払う必要もないため、有料老人ホームに比べればリーズナブルに利用できる。