「施設」ではなく「住まい」という発想

2011年10月20日から「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度がスタートしました。これまで高齢者向けの賃貸住宅には高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)などがありましたが、それぞれの違いがわかりにくかったり、高齢者向けの要件が不揃いな部分がありました。そこでこれらを整理・再編して、「サービス付き高齢者向け住宅」に1本化したのです。

新住宅のハード面の基準は居住部分の床面積が原則25平方メートル以上であることやバリアフリー構造など、従来の高専賃とほぼ同じ。1番のポイントは「サービス付き」の部分で、「安否確認」と「生活相談」が最低限のサービスとして義務付けられています。

でも実際にどのようなサービスが付いているかは物件によって千差万別。食堂を付設していたり、お買い物ヘルプのサービス付きの物件もあれば、最低限の「安否確認」と「生活相談」しかない場合もあります。入居を希望する際には、「サービス付き」に惑わされず、個別のサービス内容をチェックしなければいけません。

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「家族に迷惑をかけたくない」ものの「対策はまだ」が圧倒的に多い

日本では介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)などの施設系ばかりが先行して、他の先進国と比べると住宅系の拡充が遅れてきました。「サービス付き高齢者向け住宅」は10年間で60万戸という整備目標が掲げられていますが、今後は高齢者向けの住まいの増加で施設系と住宅系、使い分けの幅が少し広がってきそうです。「サービス付き高齢者向け住宅」は賃貸借が中心ですから、入居時に高額な一時金を支払う有料老人ホームよりも初期費用はリーズナブルに利用できます。

たとえば、離れて暮らしている親が気がかりな現役世代は多いでしょう。病弱な親、連れ合いを亡くして1人暮らしになった親、海辺に暮らす親……日本が大きな災害に見舞われた後だけに心配です。遠距離にいる親の面倒を見るのは精神的にも金銭的にも負担が大きい。できることなら呼び寄せたい。でも都心の自宅は狭くて一緒には住めない。同居用に買い替えたりリフォームするのも大きなお金がかかる、施設に入るのはウン年待ち――。そんなときに近くに高齢者向け住宅があれば、「ちょっと賃貸でこちらの暮らしに慣れてもらう」くらいの気軽な気持ちで利用しやすいのではないでしょうか。