基礎年金の半分は税金から拠出
100年安心といわれた公的年金であったが、ここにきて囁かれ始めたのが「支給開始年齢の引き上げ」である。
会社員が加入する厚生年金の場合、現在は60代前半に老齢厚生年金の一部支給、65歳から満額が支給されている。しかし、年齢によって支給開始が段階的に引き上げられ、1961年4月2日以後生まれの人は65歳からの支給となることが決まっている(女性は5歳遅れて適用)。
先頃、厚生労働省が検討に入ったのが支給開始年齢を68歳まで引き上げる案。政府は火消しにやっきとなっているものの、逼迫した年金財政を考えれば、再浮上してくることは必至だろう。
公的年金は強制加入であり、加入・非加入を選択する余地はないが、公的年金は我々にとって得な制度なのだろうか?
ひと言でいえば、答えは「あながち損ともいえない」である。
公的年金には老後の生活を支える老齢年金だけでなく、障害状態となった場合の障害年金、加入者死亡の際に子や妻に支払われる遺族年金という機能もある。
また、国民年金(基礎年金)として支給される額の半分は税金から拠出されており、年金の受給要件を満たさなければ、その権利を放棄することになる。自営業者が加入する国民年金では保険料未払いが問題になっているが、年金を受け取る権利を放棄するとは、なんと奇特な人だろうと思う。
2004年の年金制度改革のときに試算したことがあるが、公的年金と同じ内容の保障を民間の保険で賄うには、公的年金の2倍程度の保険料を支払う必要があるという結果を得た。その後、公的年金は制度改正されているが、それでも民間では1.5倍程度の保険料負担が必要なはずだ。
また、公的年金の保険料は全額が所得控除され、所得税と住民税が軽減される。個人年金保険で所得控除されるのは年間最大5万円まで。12年以降の加入では最大4万円である。
払った額ともらえる額との比較や、世代間格差に目がいきがちだが、制度そのものの損得を考えれば、「あながち損とはいえない」というわけである。