忘れてはならない教育費などの支出
とはいえ、現在の高齢者でも公的年金だけでは生活できておらず、自助努力が必要なのはいうまでもない。支給年齢が遅れれば自助努力の必要性は一層大きくなる。公的年金だけでは無理。自助努力だけでも無理。結局その2つを組み合わせるのが老後資金の正しい考え方である。
自助努力で利用したい制度の最有力候補は確定拠出年金。確定拠出年金には企業型と個人型があり、会社員が加入する企業型の場合、会社が拠出する退職金の原資と運用メニューを用意し、社員自らが金融商品を選択して運用を行う。商品には投資信託や保険、預金商品などがあり、運用成果によって退職金の額が決まる。
確定拠出年金制度を導入する企業は増加傾向にあり、12年からは会社の拠出額に加えて社員が給与から拠出することも可能となる(実際に導入されるかどうかは会社により異なる)。
確定拠出年金では、掛け金が所得控除されるほか、運用中に生じた利益に対する課税は受取時期まで繰り延べられるなどメリットが多く、普通に積立預金や積立投資をするより有利といえる。
ただし、老後資金にばかりに目を向けていると、教育費など、目先の支出に備えられないといった事態になりかねない。確定拠出年金で積み立てた額が受け取れるのは60歳以降なので、給料からいくらを確定拠出年金に回すかは、慎重に検討する必要がある。
とはいうものの、資金づくりには限界がある。そうなると重要なのは長く働くこと。年金支給までは生活費が賄える程度の収入を得ることを目指したい。そういう私も一生働くため、ファイナンシャルプランナーという職業に転職したのだ。
藤川 太
1968年生まれ。自動車メーカー勤務を経てファイナンシャルプランナーに。著書に『小遣いは削るな!』など。