カメラマン、スタイリスト、ヘア&メークアーティストなどのマネジメントを行う会社「KiKi inc.」を経営している川崎あゆみさん(66年生・既婚)。
「自分では大人ガールとか大人可愛いって意識したことはなくて、特別なことをしているつもりはありません。まわりを見てもこんな感じですし、若い頃から自分の好きな服を着るっていうのも変わってないですよ」
高校時代からファッションに興味があって、渋谷パルコ(73年オープン)、ラフォーレ原宿(78年同)といった場所で最先端の流行を「普通に」見てきた。
「学生時代の同級生には、全身シャネルって子もいたけど、私には高くて買えないし趣味も違う。自分で作ったり古着を合わせたり工夫して着てましたね。当時感じていたのは、上の世代はこうあらねばと頑張るスタイルなんだなって。ファッションだけではなく、生活空間とか車などいろんな面で派手で、憧れもしたけど自分たちは好みがちょっと違うなってことでした」
元祖大人ガール。既成の価値観に縛られることなく、自分流を標榜した最初の世代ではなかろうか。
「5つくらい年下の子はもっとこなれていて、高級ブランドとチープなものを組み合わせて着こなすのも彼女たちから学びました。こうした流れって、男女雇用機会均等法(86年施行)の影響が大きいと思います。現実にはまだまだ女性に厳しい社会だったけど、とりあえず、女性もずっと働き続けていけることになった。で、経済面で自立した女性たちが、働きながら楽しい生活を送るにはどうしたらいいのかって考えて、たとえばファッションはより自由になったのではないでしょうか」
大人ガールの源は均等法にあり。そして、発生当時は少数派だった大人ガールは、21世紀に入って主流派になるまで勢力を拡大している。
川崎さんがごく自然に新しい世代のセンスを育てていったのに対して、化粧品メーカー、コーセーの国際事業部に勤務する梅谷ゆきさん(70年生・未婚)は、15年前に中国から留学生としてやってきてから大人ガール的美学を後天的に学んだ。
「可愛いもの、大好きです。これは日本的な美意識で、外見だけでなくて、内面のいきいきとした瑞々しさも表していて、とってもステキな言葉だと思います。でも、中国で『可愛(クアイ)』といえば、子どもやペットに向けられる言葉なんですよ」
すっかり可愛い文化を体得した梅谷さん。ファッションに関しては、社内の同僚たちから多くを吸収したという。
「中国では上から下まで高級ブランドで統一するのがおしゃれだと思われていますが、自分のスタイルに合わせていろいろと組み合わせる日本のほうがずっと洗練されている気がします」
大人ガール的価値観は多くの壁を乗り越えてきたが、近い将来には国境さえ越えて世界に波及するかもしれない。