「大人ガール」って言葉をご存じですか? これはアラサーはもちろん、アラフォー世代(1970年前後生まれ)の女性たちの間にまで既婚・未婚を問わず浸透している理想のあり方を表すキーワードのひとつで、今や、その価値観を無視しては関連マーケットは成り立たないほど。しかし、男性諸氏にとっては、聞き慣れない言葉だろう。第一、「不惑の境地に達しつつある成熟した女性に向かって少女を意味する『ガール』って、おかしいんじゃないの」と語彙矛盾的な居心地の悪さを覚える向きも多いはず。そこで、大人ガールの世界観とはいったいなんなのか? そのココロと実態を探ってみました。
「最近、“アラサー”や“アラフォー”って言葉を、マスコミをはじめ、まわりでもよく聞くけれど、個人的にはネガティブな言葉に聞こえてしまうの。(中略)正直、『エイジレス』って言葉も好きじゃない(笑)。年齢なんて、ただのナンバーに過ぎないから」(『Little Secret』講談社)より。
自著でそう語るのは、モデルの平子理沙。現在、女性ファッション誌の表紙に起用されることが最も多いタレントで、大人ガールを支持する層にとっては象徴的存在でもある。プロフィールを見れば71年生まれの39歳(既婚・子どもなし)。「ただのナンバー」だとしても重すぎます。でも、見た目はどうしたって、20代ですよ。本書を読めばまたまた驚きの連続。
メークは「ファンデを塗っていないかのように見せるべビースキンが理想」で(40歳間近で「べビー」とはこれいかに)、オーガニック製品を愛用。ファッションの好みは「L.A.風、ロック、ガーリーなフレンチ……」と幅広く(嗜好は10代と変わりなし)、高級ブランドからチープな服まで着こなして、モットーは「いくつになろうと自分が好きなことをすればいい。いつまでもガールでいることを楽しんで!」。底知れぬ貪欲さに半ばあきれるけれど、このモットーこそが大人ガールの本懐。彼女たちが目指すのは、いつまでも少女のように生きていくことなのだ。
平子以外に支持されているタレントは、YOU(64年生)、小泉今日子(66年生)、永作博美(70年生)、深津絵里(73年生)、梨花(73年生)といった面々で、共通しているのは“年齢不詳”でどこか自然体的なイメージがあるところ。マトリックス的には、大人ガールはオンナを放棄したかのごとく振る舞うオバサン像の対極にあり、はたまた“年相応”にゴージャスな高級ブランドに身を包むリッチなマダム像とも異なる座標軸に位置するようだ。