EV慎重論を曲げなかった豊田会長

EVと自動運転を追うブルック・クロザーズ氏は、米経済誌のフォーブスへの寄稿で、RAV4がトヨタの「第2幕」を開くかもしれないと論じる。第1幕の主役は、ハイブリッド車「プリウス」。2004年から12年ごろまで、アメリカでエコカーといえばプリウスだった。ところが、やがてテスラが頭角を現し、大衆向けの「モデル3」や「モデルY」で大ヒットを飛ばす。

クロザーズ氏によると、当時社長だった豊田氏は、EVの普及とテスラの急成長を鼻で笑っていたという。実際、米ビジネス誌のフォーチュンは、2030年までに30車種というトヨタのEV目標が、フォルクスワーゲンが掲げる70車種に見劣りしていると指摘。株主からも、EVへの移行が遅いと批判が出た。

豊田氏は23年4月にCEOの座を退くが、会長となっても持論を曲げなかった。EV販売に陰りが見え始めた23年10月になると、「人々はようやく現実を見始めた」と得意げに語った。ちょうど寒波がシカゴを襲った24年1月には、EVの普及率は最大でも3割にとどまるとの予測を明かしている。

EVか、ハイブリッドか、水素か。どの道筋に頼るかについて、「規制や政治ではなく、顧客が決めるべきだ」とも述べ、顧客からの支持に自信をのぞかせる。

災害で露呈したEVの弱点

シカゴの寒波から1年。今度は山火事に見舞われたロサンゼルスで、充電が頼みのEVの弱点が再び露呈した。

バッテリー残量は8%で、あと16マイルほど(約26キロ)しか走れない。2025年1月、ロサンゼルス近郊バーバンクに住むテスラのオーナーが、自宅近くの充電スタンドで順番を待つ様子は、危機感に溢れていた。登録者数120万人のYouTubeチャンネル「JPland21」で、自身の状況を伝えている。

テスラ充電ステーション
写真=iStock.com/hapabapa
※写真はイメージです

チャンネル運営者でふだんはテーマパーク情報を発信している人気インフルエンサーのジャン=ピエール氏によると、当時、わずか12マイル(約19キロ)離れたパサデナ近くで山火事が発生。隣町のグレンデールでは、多くの住民に避難命令が出された。前夜は、最大で秒速約45メートル(時速約160キロ)の暴風が吹き荒れており、電線が寸断され、停電となった。

「これだから電気自動車は好きじゃない」とこぼすジャン=ピエール氏は、ガソリン代が高いことから、やむなくテスラを買ったという。当時の充電スタンドは混乱しており、家族を列の先頭に立たせて2台目のテスラの場所取りをする人まで現れた。ようやくジャン=ピエール氏に順番が来て、満充電にできたのは、山火事が迫るなか35分ほど列に並んだ後だった。