「EVでは避難したくない」との声も
このように災害のさなかに充電の列に並ぶはめになるのを恐れ、EVを敬遠してきたという人もいる。「EVでは避難したくない」と語るのは、ロサンゼルスの弁護士マシュー・バタリック氏だ。米紙ロサンゼルス・タイムズに、避難ルート沿いの充電スタンドには長い列ができ、停電も起こりうる、との考えを話している。
火災の現場から遠く離れたサンフランシスコ近郊でも、同じ不安を抱く人がいる。バークレーの丘陵地に住むバル・シポローネ氏は、日産の「リーフ」を売って、ハイブリッド車かPHVに買い替えるつもりだという。コールドウェル氏は、EVを使うには「ずっと多くの段取りが要る」と指摘。バッテリーだけで走るEVへの乗り換えに踏み切れない人は多いとみる。
マスク氏への反発に、車の故障。テスラ車を手放す理由は一つではない。
エドマンズの集計では、2025年3月1~16日までに各社の販売店に下取りに出された車の1.4%が、2017年式以降のテスラだった。これは過去最高の水準であり、前年の同じ時期にはわずか0.4%だった。ギークワイアによると、シアトル近郊のあるトヨタ販売店では、下取りに持ち込まれるテスラが、月1〜2台から5〜8台に増えたという。
「ナチの車」と罵られたテスラオーナー
シアトルで広告会社を経営するマット・マケイン氏は、テスラに乗っているというだけで罵声を浴びせられた。ちょうどマスク氏の政治活動への反発が強まっていたころだ。不快な思いをしたのは、職場近くの交差点でのことだった。スクーターに乗った男がマケイン氏に中指を立て、叫ぶ。「ナチの車め」。その週末、マケイン氏はトヨタの販売店へ行き、プリウスのPHVに乗り換えた。
かつてアメリカでエコカーの代名詞だったプリウスで、初めて出かけた日。中指を立てる人は、一人もいなかったという。「プリウスなんて誰も気にしないからね」。米テック系ニュースサイトのギークワイアの取材に、マケイン氏はそう語って笑った。
度重なる故障に懲りて、トヨタ車に乗り換えた人もいる。米自動車ニュースサイトのトルク・ニュースが取り上げたのは、米掲示板サイトのレディットに寄せられた投稿だ。投稿者のモデルYは7カ月で5〜6回も修理に入り、高電圧バッテリーやメインコンピューターまで交換されていた。
一方、このオーナーが乗り換え先のRAV4について挙げた長所は、20項目近くに及ぶ。トヨタ車の信頼性、遠出に十分な航続距離、物理的なボタンやつまみで操作できること――。「完全な電動でないのがいい。いまの自分にはハイブリッドがちょうどいい」と書く。長所のリストには、「トヨタだから」とだけ書かれた一行もあった。

