サイゼが「酒を、本当に楽しみたい人の元へ取り戻した」
至れり尽くせりなのは価格だけではない。飲みきれないボトルは、そのまま蓋をして持ち帰ることもできる。グラスでサクッといくか、デカンタでつなぐか、ボトルを1本開けるか。どの選択肢をとっても圧倒的なお得感があり、一人飲みの夜も、気のおけない集まりも、思い思いのスタイルで受け止めてくれる場なのだ。
デフレの影が色濃い今の中国で、消費の二極化はすっかり日常の風景となった。そのなかで激しい出世競争や「内巻」に疲れ果てた若者たちの目は、いま驚くほど研ぎ澄まされている。
彼らはもう、雰囲気のみの高級店には惹かれない。見栄のために払っていたコストは、ただの「虚飾のプレミアム」だったと気づいてしまった。
拙稿「中国人は親しみを込めて『レトルトの王』と呼ぶ…売上600億円突破、中国のサイゼリヤに行列ができる意外な理由」で、お伝えしたように、サイゼリヤがこれほどまでに若者たちを惹きつける理由は、どこまでも愚直な企業姿勢にある。虚飾を徹底的に剥ぎ取り、圧倒的な値ごろ感という誠実さで応え続けてきた。
そして現在の中国で、その愚直さは思わぬ革命を起こしている。若者たちのあいだでサイゼリヤは、こう評されている。「酒を、本当に楽しみたい人の元へ取り戻した」。
権力誇示や付き合いの酒席に背を向けた若者たちは、サイゼリヤのグラスを掲げながら、自分たちの価値と尊厳を取り戻している。
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