中国の若者が逃避する場所

それでは、会社の「飲みニケーション」から解放された若者たちは、日々の疲れをどこで癒しているのだろうか。彼らが足を向ける先の一つが、中国で独自の発展を遂げている日本風居酒屋だ。

上海の日本風居酒屋チェーン
筆者撮影
上海の日本風居酒屋チェーン

いまや大都市のショッピングモールを歩けば、必ずと言ってよいほど現地資本が運営する日本風居酒屋を見かける。派手な装飾やカウンター席が配された空間には、誰にも邪魔されず一人酒に浸ることも、気の置けない友人同士で乾杯することもできる。

日本風居酒屋は中国の若者にとっての貴重な逃避場となっている。

もう一つが「健康的な飲酒」という理念の普及に伴う、低アルコール酒の成長だ。近年、低アルコール酒の市場規模は急伸している。2020年以降はさらに加速しており、24年までの4年間で200億元から570億元規模へと急成長を遂げている。

若年層はアルコール度数が低く、口当たりがまろやかで飲みやすい酒類を好む傾向にあり、これは彼らが求めるほろ酔い感や飲酒を伴うコミュニケーション、心地よさを重視するライフスタイルと合致している。

そして、この波に乗って日本のメーカーも低アルコールの飲料を中国市場に投入している。

中国のスーパーに並ぶ「ほろよい」
筆者撮影
中国のスーパーに並ぶ「ほろよい」

つまり、中国の若者が望んでいるのは権力関係のない酒の場だ。席の決まりもなければ接待で気を遣うこともない場合、酒は「場の潤滑油」ではなく「本人が飲みたい商品」になる。

そして、このニーズに入り込んだのがサイゼ飲みであり、これはちょうど中国式宴席の「下位互換」として機能している。規模とコストは小さいが頻度が高く、誰でも主賓になれる場だ。

サイゼは「最高の居酒屋」

中国のサイゼリヤを見渡せば、テーブルのそこかしこで若者たちがワイングラスを掲げている。注がれているのは、イタリア直輸入の赤や白。店内を満たしているのは、高級店のような気取りのない、力の抜けた心地よいムードだ。

中国のSNSである小紅書(RED)には、サイゼリヤを居酒屋代わりに使った体験レポートが並ぶ。

「サイゼリヤが最高の居酒屋だと見抜いた奴は、控えめに言って天才」
「ここは酒飲みの楽園だ」

SNSにはサイゼリヤに対する、このような感嘆の声が絶えない。格安の洋食チェーンが、若者たちの手で「最強の激安ビストロ」へと塗り替えられたのだ。

さらに若者を驚かせた事実がある。ネット通販で同等クラスのワインを探しても、どれだけ安くても1本70〜80元、普通なら100元超えは当たり前※。それがサイゼリヤなら半額以下で飲める。それどころか、店員が目の前で丁寧にボトルを開け、きちんとしたグラスまでサーブしてくれるのだ。これだけで、ちょっとした外飲みの高揚感は一気に最高潮に達する。

※編集部註:
10月末時点のレートで100元=約2350円