VIVANT描写は日本側の攻撃?
日本のテレビドラマが、中国共産党の官製メディアから激しい批判を浴びた。問題となったのは、TBS系の日曜劇場「VIVANT」(ヴィヴァン)だ。
10月25日、中国中央テレビ系のメディアが同作品を批判し、翌26日には中国共産党機関紙『人民日報』系の『環球時報』が、中国を中傷し、中国脅威論を誇張していると非難した。
中国共産党の宣伝体系に属する複数の官製メディアが、このドラマを政治的な批判対象にしているのである。
しかも、中国側は単なるドラマ批判にとどまらず、日本の防衛政策や高市首相の姿勢と結びつけ、作品が日本の軍事的役割の拡大を正当化していると主張している。つまり、中国側はこのドラマを「日中認知戦」における日本側の攻撃として捉えているのである。
「VIVANT」は娯楽ドラマに過ぎない。だが、中国側がこのドラマに対して、強く反発せざるを得ない何かがあると考えられる。
中国が許せなかった拷問シーン
TBSドラマ「VIVANT」は2023年に第1シーズンが放送され、2026年7月から第2シーズンが始まった人気ドラマである。
堺雅人演じる主人公・乃木憂助は、表向きは商社マンだが、実際には自衛隊の非公認秘密情報組織「別班」の一員という設定だ。世界各地で国益をめぐる諜報戦を繰り広げるという、壮大なフィクションだ。
第2シーズンでは、中国系の秘密情報組織「シンシー」が日本側の別班員を拘束し、指を切断するなどの残虐な拷問を加える。中国側が特に問題視したのは、この拷問シーンだった。ここに今回の論争を読み解く鍵がある。
『環球時報』の批判で目を引くのは、「歴史の逆転」という言葉だ。同紙は、ドラマに登場する拷問が、かつて旧日本軍が中国の抗日活動家らに行った拷問と酷似していると主張する。歴史上の加害者である日本を被害者に、被害者である中国を加害者に描き直していると強弁しているのである。
だが、この批判には根本的な弱点がある。「VIVANT」は日中戦争を描いた歴史ドラマではなく、現代を舞台に、国家の裏側で活動する秘密情報組織同士の戦いを描くフィクションである。

