日本の軍国主義復活を警戒している

日本には、かつて諜報・謀略・防諜などの専門家を養成した陸軍中野学校が存在した。「VIVANT」の「別班」は旧陸軍中野学校そのものをモデルにしたと確認されているわけではないが、国家の裏側で情報を収集し、ときに秘密工作を行うという設定には、日本の情報活動の歴史を想起させるものがある。

主人公の「乃木」という名字も、日露戦争で知られる陸軍大将・乃木希典を連想させる。制作側が乃木希典から意図的に命名したことは確認されていないものの、「乃木」という名字から乃木希典を連想する人がいても不思議ではない。

「VIVANT」に登場する日本は、外交や経済だけでなく、高度な情報活動によって国益を守る能力を持つ国家として描かれる。中国側がこれを単なる娯楽として受け止めていないことは、『環球時報』が、ドラマが自衛隊の活動範囲をあいまいにし、日本の海外での行動を美化していると批判した点にも表れている。

中国側が「歴史の逆転」という建前を使ってまで過剰に反応する背景には、近年強まる日本の防衛力強化(いわゆる「普通の国化」)に対する強いアレルギーがある。作中の「別班」の活躍を日本の視聴者が熱狂的に支持すること自体を、中国側は「日本における軍国主義の復活・美化の予兆」として本気で警戒し、政治的な懸念を示しているのである。

高市首相「年末年始にまとめて見たい」

中国側は、「VIVANT」を日本の政治と結びつけている。その材料とされたのが、高市早苗首相の発言である。

10月14日の衆議院予算委員会で、高市首相はドラマを録画しており、年末年始にまとめて見たいという趣旨の発言をした。ただし、高市首相はその時点で作品をまだ見ていないと述べている。

「VIVANT」を政治的に支持したわけでも、制作に関与したわけでもないのだが、それにもかかわらず、中国側はドラマを日本の安全保障政策や政治的な認知戦と関連づけて批判している。

作品を現実の政治的論争と結び付けて批判の材料にすることは珍しくないが、政治家が視聴したいと述べたことから、作品の制作意図や政府との関係まで推定するのは論理があまりに飛躍している。

TBSの龍宝正峰社長は10月28日の会見で、国内の視聴者からも暴力描写が過剰ではないかといった意見が寄せられていることを認めつつ、作品は完全なフィクションであり、特定の国をおとしめる意図はないと説明した。

表現の是非をめぐる議論は日本国内にもある。だが、それは視聴者と制作者の間で交わされるべき議論であり、外国政府の宣伝機関が政治問題化してよい話ではない。

さらに重大なのは、中国側の批判がドラマ関連商品を展開する企業にも及んだことだ。