中国が悪く描かれても、おもしろがる
このようなドラマが存在し、日常的に放送されていることについて、かつて日本では不愉快に感じる人が多かった。しかし中国では前述の通り、若者を中心に「茶番劇」として受け止める人が多い。つまり、今回、「VIVANT」を「日本版・抗日神劇」と呼ぶということは、中国の組織が悪く描かれていても、フィクションだし、別にそんなことは気に留めない、ということの表れではないかと思う。
こうした反応を見るかぎり、むしろドラマでの中国の描き方に怒っているのは、中国に好意的で、まじめな性格の日本人のほうではないかとすら感じる。政府系メディアによる今回の報道と、一般の中国人の受け止め方はかけ離れており、SNSに見られるこうした声こそが彼らの本音といえるのではないだろうか。
さらに、中国人の関心はドラマの内容だけでなく、出演する日本人俳優にも向いている。主演の堺雅人だけでなく、阿部寛、二階堂ふみ(中国では二階堂富美と記載)、二宮和也、松坂桃李、小日向文世、役所広司などの俳優にそれぞれファンがいて、彼らの演技のうまさについてコメントしているものもある。
とくに堺雅人については、同じ日曜劇場で2013年と2020年に放送された「半沢直樹」時代からのファンも多く、「あの『半沢直樹』の堺雅人が帰ってきた。毎週日曜日が楽しみだ」という声がある。同ドラマの決め台詞「やられたら、やり返す。倍返しだ」は中国語でも仲間同士ではやったという人もいた。
国家の思惑とは違う「本音」
今シーズンの「VIVANT」では、堺雅人が中国語をしゃべるシーンがあったことも中国人を喜ばせた。堺は主人公の乃木憂助、その別人格のF、そして劉銘軒(リュウ・ミンシュエン)という3役を演じており、SNSでは堺が話す中国語が「流暢だ」と話題になった。
中国人の知人は「決して流暢とは言えないが、中国語を話している役者の中では比較的うまいほう」と分析していた。堺が早稲田大学第一文学部中国文学専修(当時)の出身で、中国語を学んだことがあり、その文化にも詳しい、という情報が現地でも知られており、中国人はシンパシーを感じているようだ。
10月上旬、NHKの大晦日の番組「紅白歌合戦」の司会者の1人に堺が決まったときも、中国で熱狂した人が少なからずいた。中国でも春節に年越しの大型特別番組があるが、日本に留学したことがある人などは大晦日の紅白を楽しみにしている人がいる。
これほどまでに中国でも愛されているドラマ「VIVANT」。今回の中国政府の報道により、国家の思惑とはまったく違うところに彼らの本音はある、ということが改めてわかった格好だ。
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