「日本人は優しいし、まじめだね」

積極的にコメントしている人は、同ドラマをこっそり観て楽しんでいて、日本語もわかる人か、日本と聞けばとりあえず批判する人のどちらかだ。彼らの書き込みを見ていくと、今回の報道に対する反応に限らず、中国でこっそり視聴している人の間で「VIVANT」が第1シーズン(23年7~9月)のときから大人気だったことがうかがえる。

たとえば、「第1シーズンはやっぱりおもしろかったな。今回はイマイチかな」「第2シーズンの日劇(日曜劇場)もおもしろい。さすが堺雅人だ」といった、第1シーズンと比較した声が多く見られた。

そうした中で、とくに私の目を引いたのは、以下のような意外なコメントだ。日本で同ドラマを批判し、日中関係の悪化を心配する声が上がっていることについて、「日本人は優しいし、まじめだね。逆に(日中関係が悪い)今の時期、中国で日本を悪く描くドラマが放送されても、中国人は別に今後の日中関係について心配なんてしないだろう」というものだった。

微博(ウェイボー)で『VIVANT』についてキーワードを検索すると、「VIVANT 日劇」「VIVANT 第二季(第2シーズン)」「VIVANT 堺雅人」「VIVANT 収視率(視聴率)」「VIVANT 法語意思(フランス語の意味)」などが多数ヒットし、関心が高いことは一目瞭然だ。逆に、日本で中国ドラマがかつてこれほど検索されたことはあっただろうかと思うほどだ。SNSを見るかぎり、日本のドラマにこれほどまでに関心を持つ中国人がいるのだと実感させられる。

マイナンバーカード取得を呼び掛ける政府イベントに登場した、広報キャラクターの「マイナちゃん」と堺雅人さん=2021年3月8日午後、東京都港区
写真提供=共同通信社
マイナンバーカード取得を呼び掛ける政府イベントに登場した堺雅人さん=2021年3月8日午後、東京都港区

「日本版・抗日神劇」と称されるワケ

前述のように、CCTVの放送後には批判的なコメントもあった。「VIVANT 抹黒中国(中国を中傷する)」といったハッシュタグの検索には多数の批判があったし、同ドラマの福澤克雄監督について「福澤諭吉の玄孫やしゃごなのか。欧米が好きで中国は嫌いだろう」というマニアックなコメントもあった。

しかし、全体的にみると、少なくとも視聴している中国人は同ドラマに関心を持ち、中国が悪く描かれている部分も含めて、おもしろがって観ている様子なのだ。象徴的なのは、SNSに同ドラマを「日本版・抗日神劇」と表現している投稿があったことだ。これは中国で長年放送されている「抗日ドラマ」の日本版という意味だ。

抗日ドラマとは、日中戦争をテーマにした戦争ドラマで、ひとつのドラマのジャンルといえるくらいポピュラーなものだ。日本人は常に悪役で、中国人が日本人を懲らしめるというストーリーを基本としつつ、その内容はさまざまだ。2000~2010年ごろに盛んに制作されたが、その内容があまりにも荒唐無稽ということで、中国の若者はまともに受け止めていない。ただ、複数の放送局で1年中放送しているので、時間に余裕のある高齢者などは視聴しており、中には史実に基づいたものだと誤解している人もいる。