にもかかわらず、EUが自らの競争力の低下を保護主義で解決しようとすること自体、まさに矛盾である。そして保護主義にまい進しているのに、自らを自由競争の旗手であるかのように位置付ける。EUは、自らにとって都合の良い貿易体制を自由貿易であると勝手に解釈し、位置付けているのではないかと疑いたくなるような有様である。
米国でも定期的に、特に共和党政権下で保護主義の機運が高まる。ただし、民主党政権に交代したり、共和党で比較的、実業界寄りの政権が成立したりすると、自由主義の機運が高まるものだ。保護主義政策を取ったところで、結局のところ、米国の貿易赤字は是正されないし、むしろ物価高騰が酷くなるだけだという経験則が働くからだ。
自分のルールを他国に強いて地盤沈下
対するEUだが、まだ組織ができて浅いということもあるが、少なくとも対外的には、EUはこれまで一貫して、自らが描いたルールの順守を他国に要求する姿勢を堅持している。それが過剰規制であり、また保護主義でもある。それではEUの国際競争力が低下するのは自明の理であるのに、EUは結局、そのループから脱せない。
日本でも保護主義の機運が一部で高まっている。高市政権の周辺には、保護主義的性格が強い産業政策こそが経済成長を高めるかのような主張を展開する経済アドバイザーもいるようだ。実際、政権は「戦略17分野」への投資を喚起したいわけだが、それがEUの展開するような産業政策に近しいものなら、経済成長にはむしろ逆効果だ。
中国が国家ぐるみでダンピング(不当廉売)を仕掛けているとして、日本が同じ手段で対抗することなどできない。ヒト・モノ・カネの全ての面で、残念ながら日本は中国に劣っている。それに、日系の自動車メーカーがHVで強みを持つに至ったのは、競争に基づく自由な発想があったからだ。EUのような産業政策の下でそれは生まれない。
EUが日本のパートナーになれるか疑問
もちろん、国家ぐるみのダンピングを仕掛ける国に対しては、適正なルールを定めたうえで、その輸入を抑制することには一定の合理性がある。そうしたルールを自由貿易に立脚した国々とともに共有するための議論をリードすることこそ、日本の役割に他ならないのではないか。一種のソフトパワー論だが、それ以外に具体策はないだろう。
残念ながら、EUがそのパートナーとなりうるかは疑わしい。むしろ米国のリバランスを念頭に、引き続き自由貿易を重視する国々との間で密接な経済外交に努めることこそが肝要ではないか。資源に乏しい日本の場合、自由貿易に基づき原材料を安定的に調達する以外、生き残る道はない。少なくとも、今のEU型の保護主義は解にならない。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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