日本から輸入した電動車は、購入補助金ばかりではなく、各国政府による公共調達(国や市町村が公費でモノやサービスを購入すること)の対象からも外れる。また日系メーカーがEU域内で生産した自動車に関しても、それを組み立てるまでに域内のサプライヤーから一定の部品供給を受けていない限り、補助金と公共調達の対象から外れるようだ。
これらの措置は、今年3月にEUの執行部局である欧州委員会が提案した産業加速化法(IAA)に基づくものとなる。日本とEUは2019年2月にEPA(経済連携協定)を発効し、互恵主義に基づく通商関係を深めることで一致したはずだが、完全に梯子を外しにかかった形だ。もっとも一連の措置は、日本のみならず他国にも適用されるようだ。
トヨタは声明を発表
韓国もまた、2015年12月にEUとの間で自由貿易協定(FTA)を正式発効したが、韓国から輸入する電動車もIAAの対象から除外される方向で話が進んでいる。1996年にEUとの間で関税同盟を発効したトルコも同様だ。仮にトルコ車もEUの補助対象外となった場合、現地で生産を行うトヨタが打撃を被る。
トルコの完成車生産の2割弱がトヨタによるもので、それもEU向けのHVやPHVがメインだ。トヨタは声明を発表し、引き続き日本やトルコ、英国など、信頼できる国で生産された自動車をIAAの対象に含めるように主張し、EUに対してアピールしている。日本政府もまた、経産省を中心に、EUに強く働きかけることが望まれる。
今回のIAAに基づくドイツとフランスの政治合意は、EUが保護主義を、中国に対してのみならず全方位的に強めていることを、我々に改めて知らしめる機会となった。米国のトランプ大統領を保護主義の“化身”かのように批判してきたEUだが、その心情は、一種の同族嫌悪にあったのかもしれない。そう思わせるに十分な姿勢である。
保護主義の何が問題なのか
もともと欧州には、強い政府による上からの産業統制を好む傾向がある。特にそれはフランスを中心とするもので、その伝統がEUの“過剰規制”とも言える体質の一翼、もとい主翼を担っているといっていいだろう。そうした考えが、後発国だった中国が強い政府の下で世界一の工業国となったことで、EUで息を吹き返しているようだ。
他方で保護主義、つまり市場保護に基づく輸出振興が意味を持つのは、経済の発展段階が低いうちであることは歴史が証明している。結局は市場原理に基づく自由競争がなければ、技術革新は生まれない。自らの国際競争力の低下を懸念するEUだが、それはこれまで自らが課してきた過剰規制の結果でもある。求められるものは規制緩和だ。

