会談の19日後に報じられた車両不採用
そうした中、今回の会談で焦点となったのがインド高速鉄道の動向だ。日印の協業が進みづらい要因の多くも、この事業に象徴される。
要因は大きく5つに集約できる。1つ目が、価格と納期に対する期待のズレだ。
シャルマ氏は、7月2日の会談の中身をこう説明する。日本政府は、ムンバイ―アーメダバード高速鉄道の優先区間を2027年に開業する計画に協力し、次世代新幹線E10系の導入を後押しすると確認した。
同路線は508キロで、東京―新大阪間の距離にほぼ相当する。日本はさらにこの日、高速鉄道網を全長7000キロに広げるというインドの構想にも賛同した。モディ氏は将来の路線に日本企業が参加するよう自ら呼びかけている。
シャルマ氏はこれを、「異例なほど直接的な、商業面での門戸の開放」と評する。日本の技術で造られた車両が、インドの新たな幹線鉄道を走る――。両政府はこの日、そうした将来像を共有した。
だが、会談からわずか19日後。鉄道業界専門誌のインターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルはインド政府筋の話として、同国が日本の新幹線車両も信号システムも調達しないと報じた。
その理由に挙げられたのが、価格と納期だ。インドのアシュウィニ・ヴァイシュナウ鉄道相は、以前からE10系のコストと納期に懸念を示してきた。
日本側はかねて、E10系の納入が2034年以降になると伝えていた。優先区間の開業予定より、少なくとも7年遅れることになる。
建設費は当初見積もりから83%増加
価格の開きも大きい。日本が提示した価格は49編成で2000億ルピー(約3200億円)。欧米製の車両なら、ほぼ半額とされる。
インドが車両価格に神経をとがらせるのは、自国の事情で事業費がすでに膨れ上がっているためだ。インターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルによると、当初約1兆800億ルピー(約1兆7300億円)と見積もられた建設費は、約1兆9800億ルピー(約3兆1700億円)へと83%膨らんだ。
グジャラート、マハラシュトラ両州での用地取得をめぐる紛争に加え、物価の上昇や施工上の課題がコスト増を招いた。工期も当初の計画から数年遅れている。
もう一つの壁が、2つ目の要因である国産化優先の方針だ。インド鉄道の高官によれば、インド政府は2024年の時点で、高速鉄道車両を国産化し、信号システムには国際規格を採用すると決めていたという。
それでも2026年7月の首脳会談で、日本はE10系の導入を後押しすると確認した。同誌によると、2015年の日印覚書は、車両や信号システムなどを日本から調達すると定めていた。インド政府はその後、覚書の修正や破棄を模索してきたが、実現したかどうかは明らかでないという。
そうした中、少なくとも初期に使う車両は、すでに国産化の方針に沿って動き出している。インドのBEMLが造る8両編成の試作車2本は、新幹線の最高時速320キロには届かない。1本目は2027年初めに引き渡され、スーラト―ビリモラ間で走行試験に入る見通しだ。
同誌によれば、BEMLには16編成が追加発注されたという。これらは、時速320キロの車両が用意されるまでの間、この路線を走ることになる。

