「中国向けの規制網」に掛かった日系企業

規制の対象は、投資にも及ぶ。

インド政府は2020年4月、中国を念頭に通達「プレスノート3」を出し、陸上で国境を接する国からの投資に対し、閣議レベルの承認を義務づけた。その後の4年間で、承認は124件にとどまり、却下は201件にのぼった。200件超の申請は宙に浮いたままだ。

規制の網は中国企業を狙って張られたはずだが、中国企業と出資や合弁、取引でつながる日系企業もこの網に掛かった。

地政学的に緊張する日中関係に鑑みれば、同じく中国を警戒するインドは日本の良きパートナーになりうる。しかし、インドが中国を排除するがゆえに、中国製部品を必要とする日本企業がインドに歩み寄れないジレンマがある。

1割超の値下げでも成約しなかったUS-2

防衛産業での協業はどうか。

米外交専門誌のディプロマットによると、2026年8月20日の日印防衛相会談を前に、小泉進次郎防衛相がニューデリーに降り立った。小泉氏は、「防衛生産こそが抑止力そのものだ」という理念を掲げ、装備品の供給網から中国を排除する構想を描く。

日本は2014年に武器輸出三原則を転換した。新明和工業製の飛行艇US-2は、戦後初の輸出案件となるはずだった。インド側は日本を相手に値引き交渉を展開し、購入意欲を見せた。

インド国防省の高官は、2016年10月、米国防専門メディアのディフェンス・ニュースに、日本が1機あたりの価格を1割超引き下げたと明かした。12機を13億5000万ドル(約2130億円)で調達する政府間取引について、この高官は、「最終決定の準備が整った」と語っている。

だが、契約は結ばれなかった。それから10年経つ今も、日本からインドへの防衛装備の移転は一件も実現していない。ディプロマットは、UNICORNの共同生産が日印の装備協力の試金石になると論じる。UNICORNは海上自衛隊のもがみ型護衛艦に搭載されるステルス性の高いアンテナで、実現すればインド向け防衛装備品移転の第1号となる見込みだ。

護衛艦「もがみ」
護衛艦「もがみ」(画像=海上自衛隊/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)