「うっかり」と「分かっていてやった」の間
“申告漏れ”にも、性質の違う2種類があり、ペナルティの重さが変わります。
単なる申告漏れであれば、追徴の本税に過少申告加算税(原則10%)が上乗せされるだけです。一方、重加算税(原則35~40%)が課されるのは、当局が「隠蔽又は仮装」があったと認定した場合です。報道によれば、高野山の件でも一部の法人に重加算税が課されています。
重加算税が課されたということは、国税当局が単なる計算ミスや認識違いではなく、課税の基礎となる事実について「隠蔽又は仮装」があったと認定したことを意味します。簡単に言えば、国税が「うっかり」ではなく「分かっていてやった」という証拠をつかんだ、ということです。
神社の事案では銀行の記録とスマホゲームの課金履歴が決め手になりましたが、高野山の件で何が証拠になったのか。私の推測では、おそらくメールやメッセージのやり取りです。重加算税を認定する際には、帳簿の処理だけでなく、関係者の供述や契約書、メールなど、認識や実際の取引を示す資料が重要になります。現在なら電子メールやメッセージが証拠になるケースも少なくありません。
もし、「宿坊の収入は収益事業に当たるのではないか?」「いや、宗教活動として処理しておこう」といった記録がメモや電子メールなどに残っていたとすれば、「分かっていてやっていた」ことの動かぬ証拠になります。
国税は電子データを復元できる
神社の事案では、銀行の記録と課金履歴が決め手になりました。一方で、調査で揉めたのは、銀行を通さない現金の支出です。口座の動きは金融機関に照会すれば追えますが、現金で何を買ったかは、帳簿にも通帳にも残りません。
現金の使い道を追う手がかりとして、今の調査で重みを増しているのが、パソコンやスマートフォンに残るデータです。現金で買い物をしても、購入の連絡や予約のやりとり、家族とのメールは端末に残ります。
私が国税に入った頃は、調査官の「7つ道具」というものがあって、筆箱の中に定規、ボールペン、マーカーとともに、5Bや6Bの濃い鉛筆が入っていました。何に使うかというと、ノートや便箋の上から鉛筆で軽くこすり、前の頁に書かれた文字の筆圧の跡を浮かび上がらせるのです。筆圧の跡が証拠になった時代です。
今は何でもパソコンで記録を残す時代ですから、鉛筆を使っても何も出てきません。その代わりに国税が用いているのが、「デジタル・フォレンジック」という特殊な装置なのです。

