毎月5万円の赤字でも不足額は1140万円

そこで、「65歳時点における夫婦世帯の金融資産保有額の『中央値』はいくらか?」を調べてみました。

諸説がありますが、65歳時点(=世帯主が65歳以上)の夫婦世帯の金融資産保有額の中央値は、どうやら、「1600万円前後」というのが最も実態に近いようです。

そして次に、「65歳男性の余命の『中央値』はいくつか?」を調べてみました(※)。65歳男性の余命の平均値について、ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、「おおむね19年(84歳まで生きる)」です。65歳男性の余命の「中央値」も、「おおむね19年」のようです。

※参考文献:厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表の概況」

余命に関してはお金と異なり「富裕層が平均値を上に引き上げる」ということが起こらないため、平均値と中央値にほとんど違いがないのでしょう。

ここまででわかったことは、

・65歳時点の夫婦世帯の金融資産保有額の中央値は、1600万円前後
・65歳男性の「余命の中央値」は、おおむね19年

ということです。そして、これらから次の2つのことが導き出せます。

・世帯主が65歳の夫婦世帯が、毎月5万円の赤字だとしても、年金収入で不足するのは(5万円×12カ月×19年=)「1140万円」であって、2000万円ではない
・65歳時点の夫婦世帯の金融資産保有額の中央値が1600万円前後であることから、やはり依然として不足額は生じない(460万円ほど残る)

なお、世帯主が65歳の夫婦世帯においては、世帯主の男性が死去した後も女性が存命であるということが充分にありえます。

男性が亡くなった後も女性は9年ほど生きる

ここでは、夫婦の年齢が同じだと仮定して、男性が65歳から19年後に亡くなると、その時、女性は84歳です。84歳の女性の余命の中央値は「およそ9年」のようですので、男性が亡くなった後も女性は9年ほど生きるということになります。

男性が亡くなった後の遺族年金については、報告書では全く触れられていませんが、仮に毎月の不足額が「3万円」であると仮定して計算しますと、(3万円×12カ月×9年=)「324万円」となって、460万円ほど残った金額で足りることになります。

また、男性が余命の中央値以上に長生きする可能性も50%はあるのですが、65歳の男性が95歳まで生きる確率を調べてみましたら(※)、「10%前後」のようですので、そもそも「不足額が2000万円に達する確率」は、「10%前後」でしかないのです。

※参考文献:厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表の概況」

一方で、本当の問題は、次の2つの点にあります。

(1)特別な支出が勘案されていないこと

これは、報告書にも明記されています。その文章を引用します。

「支出については、特別な支出(例えば老人ホームの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である」

ここまでで私は、「老後の不足額は2000万円よりも少ない」「夫婦世帯は、余命の中央値までは、保有する金融資産の中央値で賄える」と述べましたが、それはあくまでも「特別な支出を含まない」(=特別な支出は発生しない)という突飛な仮定に基づいています。

車いすのシニア男性と話す介助者
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

ですから、「特別な支出を含めると、夫婦世帯が保有する金融資産の中央値では賄いきれない」ということと、「夫婦ともに余命の中央値よりも長生きをした場合には夫婦世帯が保有する金融資産の中央値では賄いきれない」ということも言えてしまいます。

ただ、最も大事なことは、そういうことではなくて、

「各世帯の支出は十人十色だし、余命もわからない」

ということです。ですから、平均値はもちろんのこと、中央値でさえあまり意味はありません。そこで、老後に年金収入だけでは、いくらかの不足が生じるのは当たり前と考えて、あらかじめ資産運用などで準備をしておかなければならないのです。