人事で求心力は高まるのか
アンケート調査を全部読み込んで適任者を選んだと高市首相は大見得を切ったが、留任や再任の閣僚はともかく初入閣者の顔ぶれを見て、なるほどこの人なら政策に明るく力を発揮するだろうと思える閣僚が何人いるだろうか。まして、裏金問題で処分を受けた議員や過去に逮捕・起訴されて有罪判決を受けた議員もいる。疑問や批判を跳ね返すような実績を示していかないと、新内閣も失速しかねない。
かつて、7年間の長期政権を続けた佐藤栄作元首相は、「人事の佐藤」と言われる程巧みな人事で党内を掌握していたことで知られる。しかし、その佐藤氏は、「改造するほど総理の権力は下がり、解散するほど上がる」という有名な言葉を残した。
ポストを配分することは、首相の権力の源泉であり、改造すれば求心力は高まる。しかし、一方でポストに就いた者は満足して力を出さず、外された者は不満を募らせる、という議員心理を表したことばだ。いずれにしても、改造すれば内閣の求心力が高まるというものでもない。
そもそも猟官運動も受け付けない。就職試験のエントリーシートのような紙を提出させて、それを全部読み込んだ。公邸でマーカーで線を引きながら精読したのだというが、紙の上だけで、人柄や持ち味を判断するのは不可能である。面接もせずに、エントリーシートを社長一人が読み込んで採用を決めるような企業は、おそらく長続きしないだろう。
入閣できずに安堵する側近の秘書
高市首相に近い中堅議員の秘書がこんな風に話してくれた。
「うちは最初から期待も希望もしていなかったので、入閣できなくても特に感想もありません。唯一良かったのは、これで堂々と資金集めパーティーができるということです。こんな内閣で大臣になっても不自由なばかりで、いいことはないねとうちの代議士とも話しているくらいです」
公邸に引きこもって、麻生氏以外にはほとんど相談もせず、ひたすら紙を読み込んでいる総理大臣。
しかし永田町の外では、経済も安全保障も日に日にきな臭くなっている。
国内を見ても、食料品だけでなくあらゆる物価が高騰し続けている。アメリカからは、金利を引き上げ、積極財政をやめるよう、内政干渉もどきの露骨な圧力も加わり始めた。消費税減税への反対論と、物価対策の緊急の給付金を求める声も高まっている。いずれにせよ大きな財源が必要になるが、そのメドは一向に明らかにされない。
ライバルの処遇は首相の一存で決められても、物価高や外交の難題はそうはいかない。国民が待っているのは、誰を閣内に残し、誰を外すかの決断ではなく、暮らしをどう立て直すかの答えだ。
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