台湾への武器売却まで交渉カードに
にもかかわらず、トランプ大統領のG2傾斜に拍車がかかる。
春に始まったイラン戦争が泥沼化した。11月には中間選挙を控える。中国とのディールを支持率回復につなげたいトランプ大統領は、交渉に前のめりになった。
北京での首脳会談では、イラン戦争で苦しむトランプ大統領の足元をみて、習主席は、台湾問題を適切に処理できなければ米中関係が極めて危険な状態に陥ると脅した。
米側が中国との安定的関係を望んでいると踏んだ習近平は、台湾問題を交渉のテーブルに載せることに成功した。
トランプ大統領は、まさか台湾問題が提起されるとは予想していなかったのだろうか。歴代の米国大統領は中国との交渉において台湾への支援を議論させなかったにもかかわらず、協議に応じる可能性を示唆してしまった。
朝日新聞によれば、トランプ大統領が会談後のインタビューで次のように述べたという。台湾の独立は望まない、現状維持が望ましい、対台湾政策についても何ら変更はないが、台湾への武器売却については「中国次第だ。我々にとって非常によい交渉材料だ」。台湾が交渉カードであることを明言した形だ。
中国側の発表によれば、両首脳は「建設的な戦略的に安定した中米関係」の構築を米中関係の暫定的な位置づけとして合意したという。
同じ内容は、ホワイトハウスのファクトシートでも「米国と中国が公平と互恵の原則に基づき、戦略的安定のための建設的な関係を構築すべきであるとの認識で一致した」と述べられている。太平洋分割はもちろん合意されていないが、中国を米国の準ライバルと認め、安定した関係を追求するG2構想は概ね共有されたと言える。
米シンクタンクが提唱した「日米同盟解消」
一方、トランプ大統領の前のめり姿勢には、米上院の超党派議員が台湾を見捨てるものだとして強く反発している。
超党派の議員が今年5月、台湾への支持を再確認する決議案を提出した。台湾側の動揺を受け、支持が揺らいでいないことを示す狙いがあった。8月には共和党のジム・バンクス上院議員が台湾を訪問し、アメリカ議会による台湾重視と支持の姿勢を強調した。
トランプ大統領が中国とのディールのためにG2を目指す傍ら、台湾を含む第一列島線は米国にとって重要ではないとの議論が生まれてきている。今月10日、米国のシンクタンク「Defense Priorities」は、米軍は日本などの「第一列島線」から後退し、グアムなどの「第二列島線」に戦力を移すべきだと主張した。
中国との紛争のリスクを減らすため、日本、韓国、フィリピン、オーストラリアとの同盟を解消し、台湾有事への不介入を主張する提言である。
このような議論は他のシンクタンクからも出ている。
アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートの専門家は「第一列島線上の少数の国の防衛を重視するアメリカの戦略さえ、もはや維持できないかもしれない」と外交専門誌フォーリン・アフェアーズに2月に寄稿した。
もちろん、このような議論は現段階では少数派だ。
政権や議会関係者の多くは、第一列島線での紛争を抑止することを重要な利益と見る。NSS2025も、台湾に関する政策は変更していないし、同盟国はもっと貢献すべきとする。
しかし、重要なのは、米国がG2構想を政治外交的に認めてしまったことで、今度は、米国は太平洋のどこまで軍事的に守れるかという論点が浮上してしまったことだ。
米国にとって台湾や日本の防衛は選択の問題だという議論が始まってしまったことは、戦後長らく日米安保・同盟を当然視してきた日本人には衝撃的だろう。

