「売れ筋を見るな」の指示の真意
それまで、OFCが経営のカウンセリングを行う際に使えるデータは、そのお店のPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)のほか、商品についてはカテゴリー別の月間の仕入れ数と仕入れ金額の発注データだけでした。販売の結果について、何が売れたかという売れ筋商品を調べるには、OFCが仕入伝票を一枚一枚めくりながら電卓をたたき、単品ごとに仕入れた個数から売れ残りで廃棄した個数を引いて計算するしかありませんでした。
POSシステムのデータを見れば、どの単品がどの時間帯に何個売れて、どんな顧客が買ったのかがわかります。これからはオーナーさんに売れ筋商品についてのアドバイスができると思っていたら、鈴木さんの口から予想外の指示が飛び出したのです。「売れ筋を見るな。売れ筋を追うと縮小均衡になる。POSデータは死に筋を見るためにある」。売れ筋を見つけるために伝票をめくって苦労してきた身としては、この指示は衝撃的でした。
POSデータはオーナーさんやスタッフが見るもの
POSデータで見つけた売れ筋商品の発注を続けていくと、次第にその商品は顧客に飽きられて販売数が減り、発注量も減って、縮小均衡に陥る。一方、死に筋を見つけて排除していけば、棚にスペースが空き、新しい商品を絶えず店頭に並べることができるようになり、拡大均衡に持っていくことができる。小売業界で「売れ筋ではなく死に筋を見る」と発想ができたのは、おそらく鈴木さんが初めてだったのではないでしょうか。
POSシステムの導入でもう1つ衝撃的だったのは、鈴木さんが、「POSデータはOFCのためのものではなく、お店のオーナーさんやスタッフが見るためにある」と明言したことでした。OFCにとって、お店でカウンセリングを行う際、販売状況の情報を持っているという情報の優位性が仕事を成り立たせていると私は思っていました。
その構図がPOSシステムの導入により変わってしまうと感じたからです。
「商品の発注は加盟店の特権であり、責任でもある」が鈴木さんの持論でした。各店舗が自分たちの商圏の特性に適応した品揃えを行う。チェーン展開はしても、本部主導の全店一律のチェーンストアではなく、1店舗1店舗がそれぞれ異なる個店経営を進める。POSシステムは加盟店主導で個店経営を推進するために導入したことにそのとき気づかされました。


