偏差値=教育レベルではない
何が言いたいのかというと、学歴差別をやり返したいのではなく、むしろ逆である。
ちまたで低偏差値だのと揶揄されるような大学であっても、優秀な教育者から高度な教育が受けられる可能性が高い、ということを伝えたいのだ。
武田塾でも、せっかくならこう指導してほしい。
「この大学はおすすめだよ。偏差値は低めに見られがちだけど、うちの塾より優秀な先生たちに教えてもらえるよ」と。
最後に一つ、やや話題を変えてクイズを出してみたい。
日本で最も教員数、つまり先生の数が多い大学をご存じだろうか。
答えは東京大学である。東洋経済新報社の調査では専任教員数3928人で日本一となっている(注6)。学生数日本一は日本大学(約7.7万人)だが、学生数でいえば半分以下(約2.9万人)の東京大学の方が、教員数が多いのだ。案外知られていない事実ではなかろうか。
理由を考えれば当たり前で、東京大学はたとえば研究費の獲得など、多くの財務指標で日本のトップあるいは上位に位置している。お金があるのだ。かつ、いわゆる総合大学であるがゆえに幅広い学部や研究所を有している。結果的に、たくさんの人を雇うことができるのだ。
そして、そこで研究している人々は、YouTuberの思うような「超重要な問題」だけを扱っているわけではない。
注6:東洋経済「最新版!『教授など専任教員数』が多い大学ランキングトップ100。1位は東京大学、2位京都大学。上位100校の合計は10万8525人」。参考として、東京大学「教職員数(令和8年5月1日現在)」、日本大学「日本大学データサマリー」、東京大学「学生数の詳細について」
“多様すぎる”東大で行われている研究
東大で「UTalk」というサイエンスカフェが開催されている。大学でなされている研究を市民向けに紹介するというイベントだ。
直近のテーマを紹介したい。
「熱力学からみるリズムと同期」
「ボクシングジムの社会学 スポーツの経験を分析するということ」
「テクノロジーとオリエント 東洋思想は何度“発見”されるのか」
「『制度』に埋め込まれた企業、そして成長」
「コンクリートの100年とこれから」
「演劇を学問するとは? ポストドラマ演劇から考える」
いかがだろうか。
これらが「超重要な問題」かは読者の皆様のご判断にお任せしたい。ただそもそも、何が将来どのような重要性をもつのかなど、研究を始める時点ですべてわかるものではない。
すぐに役に立つ研究もあれば、何十年か後に役に立つ研究もある。役に立つかどうかという問い自体があまり意味をなさない研究もある。
要は、「高偏差値の人間が重要な問題を担い、低偏差値はそうではない」といった構図は、社会において全く成立していないのである。
むしろ、いわゆる高偏差値大学のほうが規模が大きく、ゆえに多様で、さまざまな範囲のこと――すぐには重要性がわからないこと、役に立つかどうかさえわからないことを含めて――を研究しているというほうが事実に近い。
偏差値表の「学歴ピラミッド」が、そのまま成立している世界ばかりではないのだ。
学歴は未だに大人気で、コンテンツの人気に群がるエンタメもあまた存在する。しかし、そんなにみんな大好きな大学なるものを、単なる数値の表だけでしか理解できないのはもったいない。
ぜひ、おトクな大学とか、行ってよかった大学とか、この大学のここが面白いとか、そういう議論を消費者側も受容できるようになっていってほしいと願う。
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