大学を揶揄する側の学歴はいかに
さて、問題のYouTubeチャンネルは、大手学習塾「武田塾」の講師と教務が出演していることが明らかにされている。余談だが、塾のYouTube動画にも出演している高田氏は、「wakatte.TV」とは違った口調で話し、「偏差値がすべてではないです」といった発言もしている(注5)。ふだんは「誇張したキャラクター」を演じさせられているわけである。
筆者はざっと、同塾に勤める講師の「学歴」も調査してみた。地域および校舎によってかなり差があり、情報が非公開の校舎もあるため、全容の把握はもちろんできない。全国の講師を集計したデータがあるわけでもない。
しかし限られたデータの中で、公開されている塾の講師陣と福島大学環境放射能研究所の研究者を見比べていると、ある仮説が浮かび上がってくる。
「学歴」という物差しをそのまま当てはめるならば、福島大学の研究者のほうが、同塾の一般的な講師陣より「偏差値」が高そうなのである。
注5:武田塾チャンネル|参考書のやり方・大学受験情報「【神コスパ】今から間に合う偏差値50前後の高田おすすめ大学5選!」
「おトクな大学」の見極め方
もちろん、ここに述べたようなことは詭弁でもある。
そもそも研究者の力量は、その人が成人もしていない頃に合格した大学の偏差値で決まるものではない。大学を卒業後に進学した大学院で何を学び、どのような論文を書き、その後どのような研究を積み重ねてきたのか。研究者を評価するなら本来見るべきなのはそういう側面である。
したがって、「福島大学の研究者は高偏差値大学出身だから優秀だ」と結論してしまうのは、件のYouTuberと本質的には何も変わらない。
それでもあえてそのゲームに乗ってみたのは、大学についてのあまり知られていない事実が見えてくるからだ。
世の中の大半の方は大学の名前にしか興味がなく、その中で何がされているか、ましてや学生たちが何に取り組んでいるかを知ろうとはしない。ただ、実際に大学進学をめざすお子さんをもつ親御さんや当の本人は、そういった情報を知っておいて損はない。
結論として、入試難易度以上に良質な教育が準備されている大学は各地に存在している。教員一覧や学部のウェブサイトを開けば先生の研究テーマは公開されているし、どんな施設やプログラムがあり、どんな教育が用意されているのかも調べてみることができる。
そのように大学の情報を丁寧にみてみると、「おトク」な大学はけっこうな数があるはずなのだ。そういった大学を見つけ出して進学するという志向性のほうが、偏差値表の数字しか見ない進路指導より、よほど将来的に本人のためになる。
立場上使うのが憚られるような言葉ではあるが、「学歴ハック」は可能なのである。

