「水を使わない現像技術」を発明
そうやって生まれた発明のなかでも特筆すべきなのは、水を使わなくても写真を現像できるミニラボ技術だ。小星さんが約3年かけて1984年にこの技術を開発するまで、フィルムの写真を現像するには工場で大量の水を使い、薬品を完全に洗い流す必要があった。そのため、町の写真店に現像を依頼すると、写真が仕上がるまでに1週間以上かかっていた。
「フィルム1本につき100リットルの水を使って洗っていたんですよ。大きな工場で流れ作業でやっているから、こまめに水を止めることもできません。当時は九州で深刻な水不足が発生していたし、水を使わなくて済むようにしたいと思いました」
小星さんは水洗作業を薬品による処理に置き換えることで、水を一切使わず写真を現像する技術を生み出した。その後、コップ1杯の水を必要としつつも、写真の耐久性も高められる技術を発明。これにより町の写真店にはミニラボと呼ばれる機械が設置され、たった1時間で現像が完了するようになった。常識を覆して世界中に与えた衝撃の大きさは計り知れない。
ミニラボの開発に伴い、小星さんは現像に使用する薬品を固めて錠剤にする研究もしていた。銀を溶かす液体の薬品が服につくとすぐに破けてしまうため、町の写真店で安全にミニラボを使用できるよう、扱いやすい錠剤型の薬品を完成させた。この技術が後のHOT TABの錠剤化にも応用されている。
係長になることすら難しい“高卒”でも出世
前述したように、小星さんが取得した特許は680件。次々に大きな結果を出す小星さんは、どんどん出世していく。しかし、すべてがうまくいったわけではない。
「本来、高卒で入社した人は係長になることすら難しい。そのような環境で、ものすごいスピードで昇進しました。年上の部下もできて、私は生意気だからいじめられましたね」
小星さんは会社の国内留学制度を活用し、働きながら東京都立大学工学部で学んでいた時期もある。昼間は学生として学び、夕方に出社する日々。小星さんがいない間の業務の進捗について報告する部下はいなかった。
胃薬を飲みながら学業と仕事を両立し、自律神経失調症にもなったという。それでも小星さんは研究をやめることはなかった。

