インバウンドの「量」を追う時代は終わった
インバウンドの「量」を追い求めて、観光産業の拡大を図ってきた時代は明らかに終わりつつあり、今後は限られた数のインバウンド旅行者が国内に落とすお金を最大化し、かつ効率よく国内で取り込んでいくのが、観光立国実現のうえで極めて重要になってくる。
日本のインバウンド・コンサルタントの草分けで「やまとごころ」代表取締役の村山慶輔氏は、「6000万人を目指す必要があるのか疑問を持っている」と述べたうえで、観光立国の達成度を測るためにはインバウンド旅行者数ではなく、観光消費がどれだけ域内で調達されているかや、観光が地元住民の暮らし向上にどれだけ寄与したかなどの指標を複合的に使うべきだと話す。そのうえで、観光収益が外国に流出するのを防ぐために土地売買などで世界水準に沿った一定の規制導入も必要だと指摘した。
今後もインバウンド観光が発展していくための方策のひとつとして、観光の「高付加価値化」を挙げるのは、瀬戸内地域におけるインバウンド観光振興のキーパーソンをつとめ、現在は地域経営推進機構代表取締役として観光を軸とした地域活性化に取り組んでいる井坂晋氏だ。
井坂氏は「(観光の)高付加価値化はマストだ」と話し、インバウンド旅行者をやみくもに増やすのではなく、限られた富裕層を相手に単価の高い観光サービスを提供することの有効性を指摘する。井坂氏によると、オーバーツーリズムが深刻化している京都でも高級料亭などでは単価の高さが一種の障壁となってインバウンドが殺到する状況を回避できているという。
値上げだけでは、富裕層も白馬から去っていく
白馬村でも、インバウンド旅行者が年々急増する一方で、富裕層を対象としたホテルや飲食店などが次々とオープンしている。地域の観光サービス全体の単価がさらにあがっていけば、インバウンドもしだいに富裕層に絞られて、騒音や景観の問題はある程度鎮静化しつつ、収益は伸びるということが可能かもしれない。
ただし、単価上昇が観光サービスの高付加価値化に裏打ちされていなければ、富裕層は不満を抱いて白馬から去って行ってしまう。また、高付加価値化に地元住民が寄与していないと、収益の海外流出を防げない。
これらの課題をクリアして、白馬村が地元に確実に利益をもたらす世界的な高原リゾートとして成長できるのか。まさに正念場である。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

