「第2のニセコ」は褒め言葉ではない
福島さんに限らず、村の関係者の多くが白馬に対する「第2のニセコ」というレッテル貼りに懸念をにじませる。白馬がニセコに続いて、インバウンドをてことして世界的なスキーリゾートに成長しようとしているのは間違いないが、観光産業そのものが外国資本に支配されているかのようにみえるニセコの負のイメージが白馬で現実化するのだけは避けたいと考えているからだ。すでに白馬でも外国人による土地買収と観光開発はペンションや別荘のような小口のものにとどまらず、マリオットやバンヤンツリーといった外国資本の高級ホテルチェーンがホテルを建設済みもしくは建設中だ。
戦前から登山客相手の宿が存在した白馬村は「民宿発祥の地」と言われる。現在でも旅館やペンションなどこじんまりした宿泊施設が多い。
村内の老舗旅館の社長、丸山貴義さん(49歳)は、インバウンド増加によって経営が安定化したと言いながらも、地価の高騰で施設を手放す経営者が続出していると指摘し、「なかには外資系ホテルの従業員寮になったところもある」と話した。「村内のスキー場も一時外資に渡そうという話があったが、利益を全部外国に持っていかれるのは良くないということで踏みとどまった。お金を国内でキャッチする仕組みを作るべきだ」と訴えた。
ニセコは「空中戦」、白馬は「地上戦」でいく
白馬村が今後もインバウンド旅行者なしではやっていけないということはだれもが認識している。第2のニセコにならずに、インバウンドを受け入れ続け、ニセコに負けない世界的リゾートになるにはどうしたらよいのか。白馬が抱える最も重い課題だろう。
「ニセコは空中戦だったが、白馬は地上戦でいくべきだ」。2000年代前半からインバウンド・ブームに乗って白馬村の観光開発を手掛けてきた地元の不動産会社「さくら不動産」の橋本旅人代表取締役(48歳)は観光開発の手法についてニセコとは違う道をとるべきだと主張する。橋本氏は、ニセコの観光開発について、外資が土地の購入にとどまらず、購入資金の調達まで行ってしまう傾向があり、地元住民の「頭の上をお金がびゅんびゅん飛び交っているだけ」の「空中戦」になっているという。これに対して、白馬村では、地元の金融機関や不動産業者、デベロッパーなどがタッグを組んで開発に乗り出す「地上戦」でいくことが肝要だと訴える。
実際、これまで白馬村では外国人がオーナーになった宿泊施設でも、建設やファイナンスは外資ではなく、地銀と地元建設会社が担ったケースがあるという。橋本氏自身、1万平方メートル以上の広さの土地は外国人には原則的に売らない方針をとる一方で、富裕層インバウンド向けホテルを経営している。外国人の顧客や投資家を迎えながらも、開発の上流から下流まですべてを外資任せにはせず、地元企業が積極的に関与していくことでバランスを取り、収益の少なくとも一部は確実に地元にとどめようという作戦だ。


