「とっくにダメになっていた」と村長は言うが…

白馬村の丸山俊郎村長(51歳)は、インバウンド旅行者がもし村にやって来なかったら「(白馬村の経済は)とっくにダメになっていた。村の観光も終わっていたと思う」と率直に認める。地元の旅館や民宿の経営者も、五輪後の景気停滞で苦しんでいた白馬村がインバウンドで救われたことを認めない人はいない。

インタビューに答える丸山俊郎村長
筆者撮影
インタビューに答える丸山俊郎村長

しかし、白馬村の村民たちの間からは、先行きに不安を感じる声が聞かれる。

「田舎にあこがれて一生住みたいと思って白馬にやってきたが、今は骨を埋める気になれない」

白馬村がペンションブームに沸いていた35年前に、大阪から脱サラして移住し、当時「第2の軽井沢」と呼ばれることもあった村内の別荘地「エコーランド」近くでペンションを始めた福島哲さん(76歳)はため息をつく。

白馬でペンションを営む福島哲さん
筆者撮影
白馬でペンションを営む福島哲さん

福島さんのペンションにもインバウンド旅行者はいて、インバウンド景気からビジネス上の恩恵を受けているのはたしかだが、インバウンドのあまりの急増に白馬村住民の生活が乱されていると感じている。近くには飲食店が軒を連ねる繁華街があるが、飲食店の顧客の大半は外国人で、なかには飲食店で酔っぱらって深夜大声をあげたり、路上にごみを散乱させたりと、迷惑行為に及ぶ者もいるという。

なぜ外国人オーナーは村の木を切るのか?

また、福島さんによると、インバウンド需要をあてにした外国人投資家が別荘やペンションを買収すると、自分の物件の敷地にある樹木を伐採してしまうケースが多い。村内に居住していない外国人オーナーたちが樹木の管理を面倒がっているのではないかと福島さんは話す。所有地といえども勝手に樹木を伐採するのは村の景観条例違反だと指摘しても、外国人オーナーは気に留めないという。

「景観は白馬の財産。それが失われていく」と福島さんは残念がる。ただ、それ以上に福島さんが懸念するのは、インバウンドを受け入れる宿泊施設や観光施設が外国人の所有・運営になってしまうことで観光収益が地元に還元されず外国に流出してしまう「第2のニセコ化」だ。

「(インバウンド旅行者の中には)旅行の費用を全部母国で精算する方が多い。たとえば、オーストラリアのスキーヤーだったら、宿泊代だけでなくスキーのレンタル料金なども含めて全部パッケージで支払いを来日前に済ませてしまう」