空襲だけで降伏には至らない
確かに、空を制していれば、つまり制空権(Control of the air)を握っていれば、地上や海上にいる部隊はそう簡単に自由には動けなくなります。制空権とはアメリカの軍人であるウィリアム・ミッチェルが作った言葉で、敵の航空機や空港を破壊し、自分たちが監視や物資輸送を自由にできる状態が保たれていることを指します。
陸軍同士、海軍同士はお互いの居場所を突き止めるのも一苦労ですが、空から見れば一目瞭然。民衆にとっても、居住地など生活の場を空から見張られて、時には爆弾や焼夷弾が降ってくるとなれば厄介です。
しかし、それだけで敵国が降伏することは、現実にはほとんどありません。日本も第二次世界大戦中にはアメリカからの空襲を受け、「木と紙でできた日本家屋はよく燃える」とばかりに焼夷弾を投下され、大火事になり十万単位の国民が犠牲になっていますが、それでも降伏はしませんでした。
実はドゥーエも「東京大空襲を実施すれば、日本国民は『戦争を止めてくれ』と天皇に直訴するのではないか」という見立てを語っていたのですが、実際にはそうはならず、むしろ人々は防空壕に逃げ込みながら耐えただけでなく、「鬼畜米英!」「やつら、ひどいことをしやがる」とアメリカへの敵愾心を募らせることになったのです。
ドイツに対する空爆の研究
そして、結果的に戦争を終わらせたのは、空襲でも原爆投下でもなく、ソ連侵攻。つまりブーツ・オン・ザ・グラウンドとばかりに陸上兵力が侵攻してくる恐怖心でした。
第二次世界大戦のドイツに対する空爆を研究したリチャード・オヴァリーの研究によると、空爆は最後の戦いの降伏のスピードを2、3カ月早める程度の効果しかなく、戦況を決定的に決めるようなものにはなりえないと言います。確かにアメリカのルーズベルト大統領とイギリスのチャーチル首相は共同で爆撃作戦を行うことに合意し、1944年7月から1945年4月までの間に、計100万トン以上の爆弾をヨーロッパに投下しています。それでもこれは、終盤にわずかに降伏を早めただけだとオヴァリーは認めています。

