他国の例も検証して慎重に行うべき
先にも述べたように、今回の議論が大きくなった背景には、大久保公園やタイ国籍少女の事件をめぐる世論の高まりがあった。しかし、12歳の子どもに性的行為を強いた事件は、そもそも成人が働く性風俗と同列に扱えるものではない。また、「立ちんぼ」も、性風俗を生業とする人たちの全体像ではない。当事者のあり方はもっと多様で、女性が売る側、男性が買う側とも限らない。
世論が法改正の議論に影響を与えることはある。だからこそ、目立つ事件から生まれたイメージだけで制度を考えるのではなく、実態に目を向ける必要がある。多様な当事者の声を聞き、すでに制度を導入した国で何が起きたのかを検証するべきだ。
これまでの法務省での検討会では、被害者支援団体や性風俗の経験者、セックスワーカーの権利擁護団体、専門家などへのヒアリングも行われた。買春者の処罰をめぐっては立場が異なっていても、売る側の非犯罪化を求める意見はおおむね一致していた。買春者の処罰に反対する側からは、犯罪化によって売る側へのスティグマが強まり、当事者が警察や行政、医療から遠ざかって孤立することへの懸念も示された。こうした声が、今回示された方向性にどこまで反映されているのか気になるところだ。
検討会では、委員からも当事者団体からも、日本国内で公的予算による実態調査が行われていないことが指摘された。まず国レベルで詳細な実態調査を行ってからでも、制度の見直しは遅くないのではないか。
性風俗の従事者は、イメージのなかの存在ではなく、そこで働き、生活している人たちだ。その安全と人権を第一に考えた議論であってほしい。
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