AIが「普通の大卒者」の仕事を奪う

世界的IT企業で働ける少数の高度人材には大きな機会がある。一方で、毎年大量に大学を卒業する平均的な若者を受け止める「中間の仕事」が薄い。

そこへ、AIの普及による自動化の波が押し寄せている。インドのITは基本的に他国からの「下請け」が多く、データ入力やコールセンターなど、若者が労働市場へ入る入口になってきた。そのため、AIが普及すると、まさにその入口の仕事から自動化の影響を受け、失業が増えることになってしまう。

インドの問題は、単なる「仕事の数」の不足ではない。「学んだ人材を生産性へ変換する産業構造」の弱さである。

雇用の「受け皿」が薄いことは、実はもう一つの弱点と表裏一体である。消費を支える中間層の薄さだ。

富裕層か、そうでないかの二極化状態

もともとインドは中間層が薄いと言われている。ある研究では、国際水準(絶対評価)で中間層とみなしていいのは全人口の15%にすぎず、GDPのかなりの割合を占めるとみられる富裕層が貯蓄する傾向が強いために、消費が伸びにくいと分析している。

(出典=Subramanian & Felman “Why India Can’t Replace China”, Foreign Affairs, 2022)

また、OECDの2019年の分析(相対評価=所得が中央値の75~200%の層)でも、中間層が6割以上ある国が多い中で、インドは最も低く4割程度にとどまっている。他方、所得が中央値の2倍を超える上位所得層が人口の約25%を占めており、分厚い中間層を欠いたまま上下に分かれる二極化の状態にあることがわかる。

(出典=OECD “Under Pressure: The Squeezed Middle Class”, 2019, p.18本文およびp.20 Figure 1.1)

中間層が薄いということは、新しい製品やサービスを買い支える層が薄いということでもある。それだけ「生活向上」のための市場が小さく、技術革新が生み出す新たな消費を、国内でうまく吸収し拡大していくことができない。人材の面でも、消費の面でも、成長のエネルギーが一部の富裕層に偏り、社会全体には行き渡らないのである。

【図表1】「中間層」のギャップ
筆者がOECD2019を元に作成、中国については別資料を参考に筆者が推定したもの