進学率も経済も伸びた韓国・台湾との差

もちろん教育が経済成長に役立たないなどと主張するつもりはない。実際、韓国と台湾は大学進学率が高まるとともに経済成長も高まっている。

ただし、両国が経済成長に成功した理由は、単に大学進学率を高めたことではなく、産業の高度化と、人材育成を同時に進めたことにある。1960年代には輸出向けの労働集約型製造業を伸ばし、それを支える初等・中等教育や職業教育を地道に整えてきたのである。

産業が重化学工業や機械へ進むと技術教育を高度化し、その後、知識集約型産業へ進む段階では高等教育と研究開発を強化した。世界銀行も、韓国・台湾の成長について、人的資本への投資と輸出志向の組み合わせが強力な工業化の力になったと分析している。

産業が高度化するとともに、それを担える人材が増えていくという好循環が生み出されたわけである。

重要なのは「高学歴化」そのものではない。産業が必要とする能力を教育で育て、育った人材が企業の生産性を高める。企業が成長して、より高度な人材を必要とする。そこで教育もさらに高度化する。この循環が重要だ。

韓国と台湾は「教育」と「産業」を同期させるのに成功したのに対して、インドは教育を受けた若者は増えたが、その出口となる産業の厚みが追いつかなかった。「教育」が先行しすぎて「産業」との同期に失敗したのである。

「低生産性」日本に突きつけられる課題

「ゴキブリ人民党」に集まった若者たちの怒りは、単に一人の最高裁長官や教育相に向けられたものではない。教育を受けるよう促しておきながら、それを生かす機会を十分に用意できなかった国家の仕組みそのものに向けられたものだったのである。

この問題は形を変えて日本にも存在する。もちろん、日本はインドとは違って、大卒者の大量失業に悩んでいるわけではない。むしろ人手不足が深刻な業種すら多い。問題はそれにもかかわらず、日本の生産性が低いことである。

日本生産性本部によれば、2024年の日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中28位だった。G7でも最下位である。一方、日本には世界で競争できる製造業や高度な技術基盤がある。人材も技術も企業もある。それでも、経済全体の付加価値と賃金の伸びには十分につながっていない。

(出典=公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」)