高学歴の受け皿が足りていない

ここで疑問が浮かぶ。インドは近年、世界でも有数の高成長国だった。GDPは長期的に年6~7%前後で伸び、IT大国として世界的企業も生み出してきた。それなのに、なぜ若者の仕事が不足するのか。

一つの答えが、教育と産業の成長速度のずれである。

インドでは高等教育が急速に普及した。高等教育機関の数は2014~15年の5万1000余りから、2025年6月には7万を超えた。これは独立後のインドが達成した大きな社会的成果である。

(出典=インド財務省「経済調査 2025-26」。原データは全インド高等教育調査〔AISHE〕)

だが、ここには落とし穴がある。大学を増やし、学位を持つ人を増やすことと、その人たちが能力を生かせる仕事を増やすことは、まったく別の政策課題だからだ。

結果としてインドでは、三つの問題が同時に起きている。

一つは、大卒者の急増である。二つ目は、大学で身につける技能と企業が求める技能のミスマッチ。そして三つ目が、高学歴者を大量に吸収できる高生産性の雇用不足だ。高学歴化が失業を生んだのではない。高学歴化によって増えた人材を、産業側が十分に吸収できなかったのである。

教育政策そのものが失敗だったのではなく、教育政策と産業政策が噛み合わなかったのだ。

インド・ムンバイ
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「産業の階段」をすっ飛ばしたモディ政権

その背景にあるのが、インド特有の産業構造である。

多くの国は、農業から労働集約型製造業へ移り、さらに資本集約型・知識集約型の製造業やサービス業へと発展してきた。

この過程で製造業は重要な役割を果たす。工場で働く現場作業員だけではない。技術者、現場監督、品質管理、営業、物流、経理、管理職など、幅広い技能レベルの人間が働く巨大な雇用の受け皿になるからだ。農村から移ってきた人にも、中等教育を受けた人にも、大学を出た人にも、それぞれの「次の一段」を用意できる。

ところがインドは、十分に分厚い製造業を形成する前に、ITや金融など高度なサービス業が急成長した。モディ政権における経済政策の柱として「メイク・イン・インディア」が掲げられてきたものの、製造業のGDP比率は長く十数%台にとどまっている。

いわば、産業発展の階段をすっとばして、いきなり次の段階に飛んだようなものである。