問われているのは個人より組織
これまでの職場で「優秀」とされてきたのは、自分に期待された役割を正確に把握し、関係者と調整しながら素早く動く人だった。ところがAI環境では、この構図が反転する。効いていたのは、タスクを回すスキルではなく、タスクの前後に位置する作業だった。実行工程をAIが担うようになれば、成果を決めるのは残された両端になる。差を生む場所が、移動したのだ。その土台にあったのが「閃く」というアニマル・スピリットと「練る」という立体思考だった。閃くだけでは出力に振り回され、練るだけでは動かない。
同じAIヘビーユーザーでも成果が3倍以上ひらいたのは、これらの差である。利用頻度は、成果の必要条件ではあっても十分条件ではない。
そしてこれは、新しい能力が必要になったのではない。これまで組織が評価してこなかった能力の相場が上がり、これまで評価してきた能力が下がってきていると捉えたほうが良いだろう。
ならば、問われているのは個人よりも組織の側だ。興味に従って動く人を、これまでどう扱ってきたか。役割から外れた試行を、どう評価してきたか。AI時代のハイパフォーマーの姿は、これまで会社が長年かけて選び抜き、育ててきた人材像そのものを問い直す作業を私たちに要請している。


