AI供給網を支える「半導体生まれではない企業」
AIを実際に動かす材料や装置は、意外な企業が手掛けていることも多い。
味の素は1970年代、アミノ酸に関するノウハウを応用し、絶縁性をもつエポキシ樹脂の研究を始めた。うま味調味料の製造に由来する副産物から生まれた塩素化パラフィンには、樹脂を軟らかくする働きがあり、そこからエポキシ樹脂関連製品の開発が広がった。
1999年に製品化した絶縁フィルムABF(味の素ビルドアップフィルム)は、半導体を載せる基板で回路の層を隔てる。世界シェアは95%超。ABFを中心とするファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)の事業利益は546億円で、全社の事業利益1811億円の約3割を占めた(2026年3月期)と、トレンドフォースは報じている。
もとは印刷向けの写真製版機器メーカーだったSCREENホールディングスも、精密な図版を化学的に刻むエッチング技術を転じて、ウエハー洗浄装置の最大手となった。
レーザーテックの出自はやや異なる。光学計測技術を、回路の原版であるフォトマスクの欠陥検査へと広げてきたメーカーだ。いまはEUV(極端紫外線)露光用マスクの検査装置を最大の強みとする。
畑違いの技術を転用した会社もあれば、地味な計測技術を一点突破で磨き続けた会社もある。AIの供給網は、そうした半導体生まれではない企業に支えられている。そしてTOTOは、その一角で最大級の賭けに出ようとしている。
半導体関連への投資比率を11%から5割超へ
前期の設備投資に占める半導体関連の割合は、わずか11%。それが今後数年で、5割を超える――。ブルームバーグのインタビューで、TOTOの林良祐最高技術責任者(CTO)は、そう見通しを示した。
背景にあるのは、需要側の変化だ。林氏が注目するのは、小さなチップを組み合わせて性能を高めるチップレットの普及である。「樹脂と金属ではもう足りない」と語る林氏は、チップレットの普及が高性能エンジニアリングセラミックスなどの新たな需要を生むと見る。
TOTOは2026年4月、2028年度までにセラミック事業へ約300億円を投じる成長投資計画を公表した。福岡県豊前市の工場では、2025年12月に着工した焼成棟が2027年1月に完成する。これにより静電チャックの生産能力は現状比で2割超高まると、テック・タイムズは伝えている。神奈川県の茅ヶ崎工場には研究開発棟を新設する。2026年12月着工、2028年4月竣工予定だ。
7月31日発表の決算説明資料には、さらなる増産体制の構築と大規模投資を計画する旨も示されている。

