英ファンドは株価に55%超の上昇余地と試算

そうした中、今年1月21日にゴールドマン・サックス証券がTOTOの投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。NAND型半導体の製造に使われる静電チャック事業で大幅な利益成長が見込めるとの判断だ。翌22日の株価は一時11%高となり、2021年2月以来の日中上昇率を記録したと、ブルームバーグは伝えた。

これに続いて2月、英投資ファンドのパリサー・キャピタルが動いた。TOTO株の上位20位の株主として企業価値向上策を公表し、TOTOは伝統的な国内衛生陶器の雄から半導体向け先端セラミックスの有力企業へ「静かに進化した」のに、その価値が評価されていないと訴えた。

同ファンドは事業自体を高く評価しており、TOTOを「最も過小評価され見過ごされてきたAIメモリー受益銘柄」と呼ぶ。セラミック事業は競合に対して5年分の技術的優位を持ち、今後2年の売上成長率は30%超に達するとも見込む。

一方で、会社の姿勢には批判の矛先を向けた。割安に放置されてきたのは会社の開示が不十分だからだ、というのが主な主張だ。そのうえで取締役会に、半導体関連事業への投資拡大と、世に広く知られていないこの事業の広報の強化を求めた。

開示と資本配分を改めれば、株価にはなお55%超の上昇余地があると、パリサーは見込む。TOTO広報は一連のやり取りに関し、ブルームバーグへのコメントを控えた。

米テクノロジー情報サイトのテックスポットは2026年2月時点で株価が1年前を60%超上回ったと報じ、その後も5月と6月の決算・投資計画発表を受けて上昇が続いた。

Toshiba TC58NVG0S3ETA00東芝製のNAND型フラッシュメモリ(メモリ事業は現在キオクシアが継承)(写真=Raimond Spekking/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「3D NAND」の多層化がTOTOの追い風に

AI需要が続く限り、TOTOの技術への需要も続く。

メモリー技術をめぐり、平面方向の微細化が限界に近づいたことで、考案されたのが3D NANDだ。メモリセルを垂直に重ね、限られた領域に容量を確保する。

積層数はすでに200を超え、キオクシアは332層品の量産を立ち上げているほか、サムスン電子は400層品のラインを開発中だ。主要各社は2030年末までに1000層を目指す。

層が増えるほど、メモリセルを縦に貫く「チャネルホール」の穴は、幅に対して極端に深くなる。いまや深さは幅の50倍を超え、深さ10マイクロメートルに達する。穴の形状が狙いから原子レベルでずれるだけでチップの電気特性は損なわれ、歩留まりに響く。

この壁を越える手段が、氷点下をはるかに下回る温度で削る極低温エッチングだと、米半導体装置メーカーのラムリサーチは説明する。低温にすることで従来は使えなかった反応の組み合わせが選べるようになり、穴の深さと形状の制御が大きく改善するという。

極低温のウエハーを保持する上で、静電チャックが欠かせない。プラズマにさらされて劣化する消耗品であり、定期交換が必須となる。その供給元の一社がまさにTOTOであり、両社は1990年からチャンバー内部材の共同開発を続けてきたと、テック・タイムズは伝える。

3D NANDの多層化が進むほど装置は増え、消耗品である静電チャックの交換需要も積み上がる。層数の競争が続く限り、TOTOの需要は先細りしない構造にある。