「転んだら起きればいい!」の創業者精神
その後も、結核に行く手を阻まれてもあきらめず、向こう見ずに世界に打って出て、海外メーカーに何度も煮え湯を飲まされながらも、現実を見据えて戦うことをやめなかった。
その半生を振り返った自著のタイトルはずばり、「転んだら起きればいい!」だ。
転んでしまったら、その時点でもう過去のことである。グズグズ引きずっていても仕方ない。起き上がってもう一度、走り出せばいい。
そのカラリとした合理的なメンタリティは、生来の気質なのかもしれない。だがしかし、その精神は創業者がこの世を去ってなお、アシックスという会社のなかに脈々と息づいている。
創業の理念を持続するのが難しいことは、ここで紙幅をとって語るまでもないだろう。現場と経営を同じ文脈で結び直すという作業は、労多くして成果が見えにくいからだ。
だが、その理念が本質的であればあるほど、「何のためにこの会社が存在しているのか」という存在意義が問われたとき、それは再び組織を糾合し、そして新たな次元に昇華させるための、唯一無二の原動力になるのである。


