「転んだら起きればいい!」の創業者精神

その後も、結核に行く手を阻まれてもあきらめず、向こう見ずに世界に打って出て、海外メーカーに何度も煮え湯を飲まされながらも、現実を見据えて戦うことをやめなかった。

その半生を振り返った自著のタイトルはずばり、「転んだら起きればいい!」だ。

財部誠一『敗れてもまた走れ アシックス創業者 鬼塚喜八郎の情熱』(NewsPicksパブリッシング)
財部誠一『敗れてもまた走れ アシックス創業者 鬼塚喜八郎の情熱』(NewsPicksパブリッシング)

転んでしまったら、その時点でもう過去のことである。グズグズ引きずっていても仕方ない。起き上がってもう一度、走り出せばいい。

そのカラリとした合理的なメンタリティは、生来の気質なのかもしれない。だがしかし、その精神は創業者がこの世を去ってなお、アシックスという会社のなかに脈々と息づいている。

創業の理念を持続するのが難しいことは、ここで紙幅をとって語るまでもないだろう。現場と経営を同じ文脈で結び直すという作業は、労多くして成果が見えにくいからだ。

だが、その理念が本質的であればあるほど、「何のためにこの会社が存在しているのか」という存在意義が問われたとき、それは再び組織を糾合し、そして新たな次元に昇華させるための、唯一無二の原動力になるのである。

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