「日本が喜ぶもの」を握られていた
日本にとって、パンダを借りることの直接的な利益は何かといえば、結局のところ、日本国民が喜ぶということに尽きます。観光資源にはなるでしょうし、地域経済にも一定の効果はある。しかし、戦略的に見れば、中国側は「日本が喜ぶもの」を握っていたことになる。
そして、その握っているものを、必要なときには引き揚げる。この構造は、スパイ活動や対日圧力とまったく同じです。
最初に依存させる。そこに価値を感じさせる。そして、離れられなくなったところで揺さぶる。これはパンダに限りません。
貿易もそうです。レアアースもそうです。特定の品目の輸入停止もそうです。中国が近年やっていることを見ていると、日本の内側から、真綿で首を絞めるようなやり方ばかりを選んできているように見えます。
私はこれを見ていて、テロリストや愉快犯の心理に近いものを感じます。テロや嫌がらせの本質は、相手の日常生活に支障をきたし、相手があたふたしたり、国内が分裂したりするのを見て喜ぶところにあります。
だから、テロが起きたときには、国家指導者は「つらいが、日常に戻ろう」と呼びかけるわけです。相手の狙い通りに混乱し、分裂することを防ぐためです。
「誰にこの国の土台を任せるのか」を考えて
中国がパンダを政治の道具にしているのも、ある意味ではこれと似ています。日本の中で「パンダがいなくなった」「中国と仲良くしないと不利益を受ける」という感情が広がり、それが圧力として機能することを狙っている。
現実にはパンダがいなくなって悲しんでいる人もいますし、貿易を止められて困る業者もいます。だから、うろたえるなと簡単には言えません。しかし、何かを一国に依存してしまう状態というのは怖いものです。
たとえば、2026年2月にアメリカとイスラエルがイランを攻撃したことで、ホルムズ海峡が封鎖され、燃料価格が急上昇しました。日本が原油を輸入する際、ほとんどがこの海峡を経由していることに、改めて不安を覚えた人も多いのではないでしょうか。
もちろん、個人でできることは限られています。せいぜい備蓄をする、節約意識を持つ。その程度です。
そして、インフラを守るというのは、最終的には政治の仕事です。
私たちにできるのは、どういう政治家を選ぶのか、誰にこの国の土台を任せるのかを考え続けていくことです。そのうえで、自分たちの周囲にあるインフラが狙われていないか、常に目を光らせていく必要があるのです。


