ヤフコメをめぐる4時間“軟禁”事件

――2007年には「メディア事業部シニアプロデューサー」として「Yahoo!ニュース」の責任者になります。

この人事も、自分から希望したわけではありません。当時メディア事業部の責任者だった宮坂学さん(現・東京都副知事)に「お前、このままだと辞めちゃいそうだからYahoo!ニュースを手伝えよ」と声をかけられて。「全然いいですよ、暇ですから」と。

――川邊さんの著書『7つの激変』(東洋経済新報社)には、Yahoo!ニュースをはじめ各種サービスにコメント機能を付与する過程で、既存のマスメディアと対峙する様子が描かれています。それはまさにこの時期ですね。

電通の会議室に4時間“軟禁”され、テレビ局の偉い人たちに取り囲まれちゃった話ですね。

「川邊さん、視聴者のレビューを付けるなんてありえないですよ!」
「ウチのドラマの悪口を書かれたら、どう責任を取ってくれるんですか?」

学園ドラマに登場する不良グループのように、集団で脅しを仕掛けてくるのです。

(同書「第6章 文化」より)

メディア事業部での経験は、のちのGYAO再建に活かされる
撮影=遠藤素子
メディア事業部での経験は、のちのGYAO再建に活かされる

原点は「ジャンプ・ファミコン・フジテレビ」

あの時も相当な修羅場でしたが、でも「コメント機能を何がなんでも実現するぞ!」と最初から意気込んでいたわけではないんです。

先ほども言ったように、ネット起業家なら、情報の非対称性を是正する方向に自然と向かう。目的や意志といったものとはちょっと違う。野球でいえば「この場面でランナーが出たら送りバントするよね」くらい、当然持ち合わせている感覚なんですよ。

もう一つ挙げるなら、私自身が子どもの頃から「ジャンプ・ファミコン・フジテレビ」で育った「プロコンテンツ信奉者」でもあったので、「彼らのネットへの水先案内人になろう」との気概もありました。だから必ずしもマスメディアと敵対していたわけではなく、そこにはプロコンテンツへのリスペクトが常にあったんです。