ヤフーで最も多くのサービスをつくった男

――異動した先は、社会貢献を担当する部署です。

自分が立ち上げたYahoo!ボランティアを含む、さまざまな社会貢献のサイトを「川邊が統括してくれ」と告げられました。会社としてはCSR(企業の社会的責任)と地域情報サービスの充実という大義名分を掲げていましたが、私自身は「明らかに左遷人事だな」と受け止めていました。もちろん、すごくショックでしたよ。

ただ、しばらくして考えが変わったんです。「社会貢献」という非営利のサービスに注力するのは、ヤフーみたいに本業で儲けて余裕のある会社でなければできないことだよな、と。前向きにやろうと気持ちを切り替えました。

――その後、川邊さんは社会貢献担当プロデューサーとして「Yahoo!みんなの政治」「Yahoo!ネット募金」などさまざまな事業を立ち上げます。

「ヤフーで最も多くのサービスをつくったプロデューサー」と今も自負していますよ。当時は新規サービスをつくれる人が社内にあまりいなかったし、私自身も時間があった。だからボンボンつくっていましたね。

ほぼ全ての役職を辞めた川邊氏だが、LINEヤフー基金(旧Yahoo!基金)の理事だけは継続している
撮影=遠藤素子
ほぼ全ての役職を辞めた川邊氏だが、LINEヤフー基金(旧Yahoo!基金)の理事だけは継続している

ネット起業家たちの「共通テーマ」とは

立ち上げたサービスには、おおむね共通するテーマがありました。「情報の非対称性の解消」です。

ごく一部の既得権者が占有している情報を、インターネットの力で個人にも開放して、情報格差を是正する。私に限らず当時のネット起業家たちは、インターネットがもたらす「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を信じていたんです。私流の言い方をすれば「身もフタもない世界」にする、ということです。

その「身もフタもない世界」を実現したいちばんの象徴が「Yahoo!オークション(ヤフオク)」です。個人が中古品を売り買いできるCtoC市場が生まれたことで、いろんなモノの値段がつまびらかになり、プロの業者しか知らなかった「本当の相場」が誰にでも分かるようになった。

政治にしてもニュースにしても同じです。「不都合な情報を隠そうとする人たち」がいる領域で「身もフタもない世界」をどう色濃く実現し、個人をエンパワーメントさせられるか。それが、30代前半だった私の大きなチャレンジでしたね。