「人殺しのチュキ」と呼ばれた鉱山
2000年代初頭には、チュキから出る廃石が家屋や庭にまで捨てられるようになった。精練所から出る有毒ガスの雲が大通りや町のあちこちに漂っていた。
住民たちに健康被害が見られるようになったため、鉱山には新たに「チュキ・キ・マタ(人殺しのチュキ)」というあだ名がつけられた。
そのため、この鉱山を経営するチリの巨大国営企業コデルコは、2万人の住民全員を数年かけていちばん近くにあるカラマという都市に移住させた。
住民たちには新しい家や学校が提供された。2008年にはチュキは空っぽになり、そのまま放置された。
しかし、ここアタカマ砂漠は地球上でもっとも乾燥した砂漠地帯のため、残された町は劣化するどころか保存され、多くの建物は人が去ったときのままの状態を保っている。
学校の窓をのぞき込むと、黒板に走り書きされた生徒たちの別れのメッセージが見える。
家屋のなかをのぞくと、洗面台のシンクに置かれた歯ブラシや使われずに残ったキッチンペーパー、マントルピース(暖炉)の上のクリスマスカード、キッチンテーブルに置かれた買い物リストなどが見える。
家屋をのみ込む廃棄岩の山「トルタ」
チュキの北部の地区に車を走らせると、すぐに巨大な丘の影に差しかかる。大量の廃棄岩の山だ。チリの風景のあちこちに、地元の人々が「トルタ」(スペイン語でケーキのこと)と呼ぶこのような人工の山がある。
チュキのケーキはすでに家屋や商店の4分の1以上を埋め尽くしている。1960年代にはラテンアメリカでもっとも先進的だった7階建ての病院は、今では完全に埋もれている。
穴を爆破して出た廃棄岩が時折トラックで運ばれてきて、また新たに別の通りが埋め尽くされる。
実のところ、鉱山にのみ込まれそうな町は、世界でここだけではない。
スウェーデン北部にあるキルナ鉄鉱山はあまりに広大になったため、掘削地の上に位置する町は建物をすべて数キロメートル離れた場所に移動させなければならない。チュキの場合、建物はもとの場所に放置されただけである。

