20世紀の動力源となった銅
過去120年あまりの間に、数え切れないほどの企業が生まれては消え、無数のビジネス帝国が興亡を繰り返してきた。
電気の時代が去り、コンピューターの時代が誕生して成熟し、電気自動車が石油自動車に取って代わるようになった。
しかし、このすべての時代を「チュキ」は持ちこたえてきた。毎年何十億トンもの岩石が地面から引きはがされ、何十万トンもの純金属へと精練されてきた。
世界中の人々が、見たことはおろか聞いたこともないこのチュキの穴から、20世紀の動力源となる銅が生まれたのだ。
銅は中国の台頭を後押ししたが、これから数十年のうちに、二酸化炭素排出量削減のために計画されている送電網の構築や、環境に優しい車両、風力タービンの製造にも貢献するだろう。
そして、銅の秘密兵器である「規模」の話につながる。
そもそも世界に電気がある理由のひとつは、有史以来、地球上の全鉱山で生産されてきた金の総量よりもさらに多くの銅を、毎年やすやすと生産できる場所(チュキの場合、銅の生産量は金の2倍)が存在するからだ。
立ち止まって少し考えてみてほしい。アメリカ・ネバダ州のコルテス金鉱山が地面の小さなくぼみに思えるくらい巨大なチュキカマタの裂け目を心に描きながら、そこに思いをはせてみてはどうだろうか。
銅が生んだゴーストタウン
チュキカマタの奇妙な点の2つ目は、町のメインストリートに戻るとはっきりわかる。遊び場には子どもが1人もおらず、スタジアムでスポーツをしている人も銀行の窓口に並んでいる人もいない。
この趣のある古い町はまったくの空っぽだ。
実は、チュキカマタはアタカマ砂漠のもう1つのゴーストタウンなのである。
しかし、ネバダ州の金鉱山のそばの打ち捨てられた小屋や、この砂漠の平原のさらに奥にある古い硝石の町とは違い、この町の物語は過去ではなく未来について警告を発している。
チュキの町が放棄されたのは、鉱山が閉鎖されたからでも鉱石がなくなったからでもない。その正反対である。鉱山に食い尽くされそうになったために、町を閉じることになったのだ。
機械がどんどん深いところまで掘削して、運び出される土砂が増えるにつれて、廃棄物として出る岩石、がれき、スラグ(かす)の山が町を侵食し始めたのである。

