純度ほぼ100パーセントの「陰極銅」
坑底から鉱石を運び出すトラックは外からはほとんど見えないが、こうした車両はコマツ(小松製作所)という日本の企業が製造しており、地球上では最大のものになる。底から地上にたどり着くのに1時間以上はかかる。
岩石は、町の近くにあるトラックの車庫に到着すると、アメリカ西部ネバダ州のコルテス金鉱とほぼ同じやり方で粉砕される。粉々になった銅は特殊な溶液のなかで撹拌され、泡とともに分離される(浮遊選鉱)。
その後、一部は製錬されて電解され、純度がほぼ100パーセントに近い輝く銅板になる。これは「陰極銅」と呼ばれる。
残りは、約30パーセントの銅を含む黒っぽい粒状の土に似た「銅精鉱」として、別の場所で精練され、完成品となる(※)。
世界中の原子を混ぜた「カクテル」
陰極銅と銅精鉱は、毎日のように列車に積み込まれる。
そしてチリ、ボリビア、ペルーの硝石戦争を招いた、かの有名な鉄道の線路を走って海岸まで下り、陰極銅は製造業者に向けて輸送され、銅精鉱はコンテナ船に積み込まれて中国の精練所に向かう。
このチリの銅は、その精練所で初めて純銅になる。もうこの時点では、それがどこから来たものなのか、本当にわかっている人はいない。
世界の銅のおよそ80パーセントは、地中から掘り出された場所から遠く離れたところで、このような手法で生産されている。そのため、実際にどの地面から出てきた銅なのかを正確に突き止めるのは非常に困難だ。
世界の銅板、銅棒、銅線のほとんどは、世界のあちこちからやってきた原子を混ぜ合わせてつくった「カクテル」である。
チリ産とオーストラリア産を少々、それにインドネシア産とアフリカのコンゴ民主共和国産を加え、大昔にどこかで採掘された銅をリサイクルしたものを少し混ぜる、という具合だ。
銅板の一枚一枚が、グローバリゼーションを物理的に体現しているのだ。
それでもこの場所が、見方によっては地球最大の鉱山だということを考えれば、誰の身の周りにも多少はチリ・チュキカマタの銅が存在することは間違いない。
※「陰極銅」に、電池の電極と同じ「陰極」という言葉がついているのは、これをつくる最終段階で電解が行なわれるからである。かなり高純度の金属のかたまり(約95パーセント)を電解槽に沈めて電流を流す。銅の原子は製錬されたかたまり(電解プロセスでは陽極)から、もう一方の電極である陰極へと移動する。すると純度99.99パーセントという、さらに純度の高い銅ができ上がる。このプロセスはチリ・チュキカマタの精練所で大規模に行なわれている。

